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[北海道]                                H29.10.31
・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。  Vol.100

              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
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※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています
。
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− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 平成29年9月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]
◇ 平成28年北海道における方面別自殺者数(確定値)[厚生労働省]
【2】 自殺について知ろう
◇ 自死遺族支援「いじめ/過労問題」(『ワンストップ支援における留意点』より)
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP及び携帯HPをご覧ください
【4】 編集後記
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【1】北海道における自殺の現状

◇平成29年9月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
警察庁より平成29年9月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。
平成29年9月の北海道の自殺者数は73人でした。また、全国の自殺者数は1,769人、そのう
ち男性は1,256人、女性は513人でした。
以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1.平成29年9月末と平成29年8月末の月別自殺者数の比較          (単位:人)
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       北海道   全国    全国(男性)  全国(女性)
H29年9月   73     1,769    1,256      513
H29年8月   86     1,813    1,260      553
前 月 比   -13     -44     -4       -40
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平成29年9月の自殺者数は、前月比で北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてにおい
て減少しました。都道府県別では、自殺者数が増加したのは22、減少したのは23、変
化なしは2でした。

2. 平成29年9月末と平成28年9月末の月別自殺者数の比較         (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       北海道    全国    全国(男性) 全国(女性)
H29年9月   73      1,769    1,256     513
H28年9月   91      1,765    1,206     559
前 年 比   -18      +4     +50      -46
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

前年同月比では、北海道と全国女性が減少し、全国と全国男性が増加しました。
また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは22、減少したのは22、増減なしは3
でした。

◇平成28年北海道における方面別自殺者数(確定値)[厚生労働省]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回は、厚生労働省『地域における自殺の基礎資料』の平成28年の発見日・発見地の確定
値データを、警察署管内の方面別に集計しなおしてご報告します。
なお、「札幌方面」は石狩・胆振・日高全域と深川市・雨竜郡を除く空知および寿都郡・
島牧郡を除く後志、「旭川方面」は上川・宗谷・留萌全域と深川市・雨竜郡、「函館方面
」は渡島・檜山全域と寿都郡・島牧郡、「釧路方面」は釧路・根室・十勝全域、「北見方
面」はオホーツク全域です。

1.平成28年北海道の方面別男女別自殺者数      (単位:人、[ ]内は前年比)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         総数      男性     女性
全道     1,004[-143]  714[-53]  290[-90]
札幌方面   583[-85]   413[-36]  170[-49]
旭川方面   133[-17]   100[-1]   33[-16]
函館方面    86[-37]   62[-22]   24[-15]
釧路方面   141[+12]   98[+13]   43[-1]
北見方面    61[-16]   41[-7]    20[-9]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
自殺者全1,004人中、札幌方面の自殺者数が6割近くを占めますが、カバーする地域の広さ
と人口の多さも影響していると思います。全体としては前年から大きく減少している項目
が多いのですが、釧路方面の男性の自殺者数の増加が気になるところです。

2.平成28年北海道の方面別世代別自殺者数       (単位:人、[ ]内は前年比)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        青少年     中高年     高齢者    不詳
全道      134[-17]   478[-48]    386[-80]   6[+2]
札幌方面    92[-2]    294[-24]   194[-61]    3[+2]
旭川方面    10[-7]    66[-9]     55[-13]    2[±0]
函館方面    9[-3]     24[-27]    52[-9]     1[±0]
釧路方面    21[+1]    65[+13]    55[-2]     0[±0]
北見方面    2[-6]     29[-1]     30[-9]     0[±0]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
29歳以下を青少年、30歳代から50歳代を中高年、60歳以上を高齢者と分類し、方面別に世
代別の自殺者数を示しました。
全体的に前年よりも減少している方面と世代が多いようですが、中身を見ますと、札幌方
面の20歳代は+7、50歳代は+4となっています。また、釧路方面の高齢者は前年比マイナス
になっていますが、中身を見ますと60歳代が+11となっており、気になるところです。特
に、釧路方面の中高年の+13という数値は気になるところで、こうした増加傾向が今後続
かなければよいがと思います。

北海道の方面別自殺者数については、北海道地域自殺対策推進センターのホームページ上
に詳しいデータをアップしてありますのでご参照下さい。

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【2】自殺について知ろう

◇自死遺族支援「いじめ/過労問題」(『ワンストップ支援における留意点』より)◇◇
来月11月は「過労死等防止啓発月間」です。過労死には、業務における過重な負荷による
脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡の他、業務における強い心理的負荷による精神障
害を原因とする自死による死亡も含まれます。Andante vol.97、98でご紹介した『ワンス
トップ支援における留意点』には、いじめによる自死や過労死によって遺族となった方達
への支援について書かれた1章がありますので、今回の「自殺について知ろう」はこの章
と、自死遺族一般についての支援について書かれた2つの章をまとめてご紹介します。

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最初に、自死遺族の支援における以下のような6つのポイントがまとめられています。
@ 情報提供と生活支援、および法的支援を基本とすること
A “ただ寄り添う”という姿勢を大事にすること
B 安易な励ましや慰めはしないこと
C 原因追及や非難はしないこと
D 遺族同士の”分かちあい“の場を確保すること
E 心理的ケアや精神科治療を安易に勧めたり、強く勧めないこと
自死遺族の多くは(1)情報の問題、(2)生活・経済上の問題、(3)こころの問題、
という3つの問題を抱えることになります。(1)は、社会資源や制度、相談窓口、その
他当面の生活の上で必要とされる情報に関する問題、(2)は、衣食住、職業、家事、コ
ミュニティー活動、学業、経済状態等、日常生活そのものに関する問題、(3)は、心理
的反応・精神保健に関する問題です。
自死遺族支援の中では、しばしば(3)ばかりが注目されますが、実際の支援では(1)
と(2)の方が中心となります。もちろん、こころのケアは提供されるべき重要な支援の
1つではありますが、遺族にとって優先順位が高い支援は、情報提供と生活支援であると
のことです。
以上のことを押さえた上で、学校でのいじめ自死における遺族支援には以下の3つのポイ
ントがあるとのことです。
@ 遺族が弱い立場になりがちであることを理解しておく。
一個人である遺族に対して学校・教育委員会は大きな組織であり、遺族は弱い立場になり
がちです。また、いじめの現場が学校なので、遺族にはわからない点も多く、調査は学校
側が主導することもあり、遺族は「関与できない」「自分の力が及ばない」といった無力
感や不全感が強まり、「自分は役に立たない」という自己効力感の低下に陥ることにもな
ります。元々、大切なこどもを自死で亡くしたことで、衝撃を受け、悲しみ、苦しんでい
る上に、調査の結果や、新たにわかった事実によって、さらに傷つく場面もあれば、誤解
や偏見に基づく、亡くなったこどもや遺族に対する周囲からの不当な非難を受けることも
あります。
A 必要に応じて弁護士の協力を得る。
こどもの自死にともなう心理的な反応のため、あるいは学校側への不信感から、冷静な対
応ができず、その結果、遺族の立場が悪くなるといった場合もあるので、そのような事態
を避けるためにも、遺族の代理人という形で弁護士が協力することは有効であるそうです
。
B 第三者委員会の設置が有効であり、設置を積極的に働きかける。
調査を行うための組織として、第三者委員会を設置することは、自死遺族と学校側の対立
や遺族が学校側に抱く不信感の軽減にきわめて有効だとのことです。第三者委員会の設置
に向けて遺族側から積極的に働きかけることが重要だそうです。

過労自死の一要因であるパワーハラスメントは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の
地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身
体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義され、暴行・傷害などの身体的
な攻撃、脅迫・暴言等の精神的な攻撃、無視・仲間外しなどの人間関係からの切り離し、
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、業務上の合理性なく能力や経験と
かけ離れた程度の低い仕事を命じたり仕事を与えないこと、私的なことに過度に立ち入る
ことなどが含まれます。
いじめ自死や過労自死の遺族支援においては、いじめや労災の認定や補償問題などが生じ
るため、弁護士の協力が必要となる場合が多いのですが、多くの弁護士がこれらの問題に
詳しいわけではないので注意が必要です。遺族支援団体や自死問題を取り扱っている弁護
団にたずねると、これらの問題に詳しい弁護士と直接繋がることができます。過労自死に
おいては労災申請をして認定を受けることが重要になるので、証拠の確保が極めて重要で
あるため、関係者の証言や証拠を集めることがとても重要だそうです。

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いじめや過労は誰にでも起こりうることであり、そのことからうつ病に罹患してしまうこ
とも、そしてさらに自死に至ることも誰にでも起こりうることであり、したがって誰でも
自死遺族になりうるということは銘記しておかなければいけないなと思います。

参考文献 一般社団法人日本うつ病センター(2017)『ワンストップ支援における留意点−
複雑・困難な背景を有する人々を支援するための手引き−』


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【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
月曜から金曜日                    9:00〜21:00
土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)   10:00〜16:00
Tel:0570-064-556
※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して
おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。
パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察
から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら
も併せてご覧ください。
携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

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【4】編集後記

皆様、こんにちは。
木々の葉がすっかり紅葉・黄葉し、錦絵のように美しいなと見とれる反面、寒さが身にし
みる季節になってきました。季節の変わり目、風邪など召さないようお気をつけ下さい。

今回、Andanteは無事Vol.100を迎えることができました。また気持ちを新たに1号ずつ書
き継いでいこうと思います。Andanteがさらに100号重ね、Vol.200を迎えるのは平成38年
の予定ですが、今年閣議決定された自殺総合対策大綱では、その平成38年までに平成27年
の自殺死亡率の30%減を目標として掲げています。AndanteがVol.200を迎える前にその役
割を終えられるような、みんなが天寿を全うできる社会が来ればよいなと思います。

いつもご愛読ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
次号Vol.101は、2017年11月末に配信予定です。


                                                        *お問い合わせ先* 
                                                北海道立精神保健福祉センター
                                               札幌市白石区本通16丁目北6番34号
                                                              Tel 011-864-7121
                                                              Fax 011-864-9546
                                    URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                                    Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp