=============================================================================== [北海道] H29.11.30 ・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。 Vol.101 〜北海道の自殺対策について〜 Hokkaido 発行:北海道地域自殺対策推進センター Government (北海道立精神保健福祉センター内) =============================================================================== ******************************************************************************** ※『Andante:アンダンテ』とは 「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって 適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす 中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています 。 -------------------------------------------------------------------------------- − 目 次 − 【1】 北海道における自殺の現状 ◇ 平成29年10月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表] ◇ 全国における死因順位、割合[人口動態統計] 【2】 自殺について知ろう ◇ 自殺ハイリスク者支援「生活困窮者」(『ワンストップ支援における留意点』より) 【3】 お知らせ ◇ こころの電話相談 ◇ HP及び携帯HPをご覧ください 【4】 編集後記 -------------------------------------------------------------------------------- ******************************************************************************** 【1】北海道における自殺の現状 ◇平成29年10月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 警察庁より平成29年10月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。 平成29年10月の北海道の自殺者数は76人でした。また、全国の自殺者数は1,601人、その うち男性は1,120人、女性は481人でした。 以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。 1.平成29年10月末と平成29年9月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− H29年10月<北海道 76人、全国 1,601人、全国(男性) 1,120人、全国(女性) 481人> H29年 9月<北海道 78人、全国 1,796人、全国(男性) 1,273人、全国(女性) 523人> 前 月 比<北海道 -2人、全国 -195人、全国(男性) -153人、全国(女性) -42人> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平成29年10月の自殺者数は、前月比では北海道・全国・全国男性・全国女性において減少 でした。都道府県別では、自殺者数が増加したのは15、減少したのは30、変化なしは2で した。 2. 平成29年10月末と平成28年10月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− H29年10月<北海道 76人、全国 1,601人、全国(男性) 1,120人、全国(女性) 481人> H28年10月<北海道 86人、全国 1,820人、全国(男性) 1,273人、全国(女性) 547人> 前 年 比<北海道 -10人、全国 -219人、全国(男性) -153人、全国(女性) -66人> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 前年同月比では、北海道・全国・全国男性・全国女性において減少でした。また、都道府 県別でみると、自殺者数が増加したのは10、減少したのは36、増減なしは1でした。 ◇全国における死因順位、割合[人口動態統計]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 今回は厚生労働省『人口動態統計』より平成28年中の全国における死因順位をご紹介しま す。なお、北海道における死因順位については北海道保健統計年報が更新されましたらお 知らせしたいと思います。 3. 平成28年全国における死因順位と死亡総数に対する割合、および人口10万人対自殺率 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 死因 死亡数 割合 死亡率 1位 悪性新生物 372,986 28.5% 298.3 2位 心疾患 198,006 15.1% 158.4 3位 肺炎 119,300 9.1% 95.4 4位 脳血管疾患 109,320 8.4% 87.4 5位 老衰 92,806 7.1% 74.2 6位 不慮の事故 38,306 2.9% 30.6 7位 腎不全 24,612 1.9% 19.7 8位 自殺 21,017 1.6% 16.8 9位 肝疾患 15,773 1.2% 12.6 10位 慢性気管支炎及び肺気腫 15,686 1.2% 12.5 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 4. 平成28年全国における自殺の年齢別死因順位 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 年齢 10-14歳 15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 順位 2位 1位 1位 1位 1位 1位 2位 45-49歳 50-54歳 55-59歳 60-64歳 65-69歳 70-74歳 2位 3位 4位 4位 7位 8位 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 死因として最も多いのは「悪性新生物」で全死因中の28.5%を占めています。つぎに「心 疾患」、「肺炎」と続きます。「自殺」は8位で、全死因の中で占める割合は1.6%となり ます。なお、「自殺」までの順位は昨年と同様です。自殺の男女別順位は、男性が7位、 女性が上位10位圏外でした。年々自殺者数、自殺率共に減少してきていますが、未だに年 齢別にみても15~39歳までの死因第1位となっており、予断を許さない状況でもあります。 参考文献 厚生労働省、『人口動態統計』 内閣府、『平成29年版自殺対策白書』 ******************************************************************************** 【2】自殺について知ろう ◇自殺ハイリスク者支援「生活困窮者」(『ワンストップ支援における留意点』より)◇ 今回は自殺のハイリスク者である「生活困窮者」について取り上げます。 生活困窮者のサポートへの足かせの一つとして「自己責任論」が挙げられます。つまり、 生活困窮者が危機に瀕しているのは良い会社、あるいは大学などに入る努力を怠ったから だとする論調です。そして、その思考は生活困窮者自身にも根付いているため、自分の現 状は自分自身が招いたものであるとし、辛さや不安をため込み、助けを求めることも難し くなります。実際には、労働環境の影響や病気などやむにやまれぬ事情があったとしても 、それを外ではなく内にため込み、ますます自分を追い詰めてしまいます。それらの点を 踏まえて、彼らに対してどのような態度で支援を行っていくか『ワンストップ支援におけ る留意点』から一部抜粋してまとめていきたいと思います。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− [相談者の特徴] ・家族関係、失業、知的障害、精神疾患、慢性身体疾患、性的マイノリティー、犯罪歴、 借金問題など、多様な問題を抱えている人が少なくない。 ・過去に危険な目に遭った経験があり、トラウマ反応に起因する非協力的・非社会的で、 変動の多い行動様式を示す人が少なくない(警戒心が強い、猜疑的、攻撃的、易努的、逃 避的、無気力、深刻味にかける、一貫性に欠ける、決断できない等) ・自力では解決困難な問題に圧倒され、「自分の力では何も出来ない」という“自己コン トロール感の喪失”に陥っている人が多い。 ・「周りにたくさん人はいるが、いざとなったら頼れる人はいない」という“自己コント ロール感の喪失”に陥っている人が多い。 ・繰り返される被害体験や失敗体験のため、「どんなに努力をしても未来は変わらない」 という“縮小した未来感”や、「自分なんて存在する価値がない」という“自尊感情の低 下”や“自己有用感の喪失”に陥っている人が多い。 ・良好な支援関係を築きにくい傾向がある。 ・順調な経過を辿っているように見えても、その反面で生活困窮に至った主たる原因とな っている最重要な問題や悩みを共有できないため、心理的な孤立を深めていく人もいる。 支援における9つのポイント @“判断を交えない態度(non-judgmental attitude)”を基本姿勢とする A初期対応としては、安心・安全な生活の場を提供し、まずは休んでもらうことを最優先 する B経済的困窮だけに注目し過ぎない(多様で複数の問題を抱えていることを前提とする) C生活困窮者が陥りやすい心理状態や行動様式を理解しておく D支援拒否や中途離脱への寛容 Eうまく行かない場合にも、継続して次の社会資源につなぎ戻す、連続的な支援を提供す る(“伴走支援”、“寄り添い支援”) F自立を進めることで、孤立を増強させることがあることを常に想定しておく G孤立の解決に向けて、互助(相互援助)が体験、実践できるような環境設定をおこなう H福祉、介護、保健、医療、成年後見、権利援護、警察、民間組織、地域コミュニティー 等との連携、人的交流(個別相談、連携会議の開催・協力、研修会等への相互協力等) [支援の実際] @ “判断を交えない態度(non-judgemental attitude)”を基本姿勢とする 生活困窮者の置かれている状況は様々であると同時に、その“痛み”はきわめて人間的な ものであり、それぞれに個性があることを理解することが大切である。さらに、自己決定 することを許されない状況下での生活を強いられた者にとっては、自らが望まない支援の 提案は、無力感や失望を増強し、二次的な被害を与える可能性があるので注意を要する。 推奨される基本姿勢は、判断を交えない態度(その人の考えに解釈や判断をせずに「私が 何をすればあなたの役に立つのでしょうか?」と問いかける姿勢)に徹することである。 A 初期対応としては安心・安全な生活の場を提供し、まずは休んでもらうことを最優先 する B 経済的困窮だけに注目し過ぎない(多様で複数の問題を抱えていることが前提) 生活困窮に陥った背景としては、多様で複数の問題を抱えている場合がほとんどであり、 経済的困窮の解決だけを目標としてうまくいかないことが多い 知的障がいや教育を十分に受けられなかった人も多く、読み書きが不自由な場合も少なく ない。統合失調症などの精神疾患、認知症、発達障害があったり、糖尿病や心臓疾患、腰 痛などの慢性身体疾患に罹患している場合もある。借金問題や犯罪歴、夫婦関係や親子関 係のトラブルから家を出ざるを得なくなった人もいる。 C 生活困窮者が陥りやすい心理状態や行動様式を理解しておく 生活困窮者の中には、様々な傷つき体験、失敗体験をしていたり、身体的、心理的な暴力 被害に遭遇してきた者が少なくない。 個人の力では解決困難なつらい体験に遭遇したときにしばしば生じる心理行動上の反応と して、不安・緊張、不眠、抑うつ、幸福感の喪失の他に、“社会活動能力の低下”、“対 人関係困難(人とうまくつきあえない、孤立等)”があることも知っておく必要がある。 生活困窮者の中には、過度に攻撃的で易怒的だったり、支援の途中で逃避する、あるいは 、無気力で非協力的だったり、拒否的といった行動パターンを示す者が少なくない。この ような行動は、本人のわがままや病的な性格等に起因するものではなく、これまでの過酷 な体験、つまり“異常事態に対する、正常な反応”であるという理解が必要である。 D 支援拒否や中途離脱への寛容 E 上手くいかない場合にも、継続して次の社会資源につなぎ戻す、連続的な支援を提供 する(“伴走型支援”“寄り添い支援”) 支援生活困窮者の多くは、社会との交流再開や再参加を目指して何度も挑戦するもうまく 行かないという経験を数多くしており、「どんなに努力をしても未来は変わらない」とい う“縮小した未来感”や、「自分の力では何も出来ない」という“自己コントロール感の 喪失”に陥っている。そのため、支援者の協力を得て挑戦したことが失敗に終わると、さ らに希望と意欲を失うこととなる。 したがって、支援を開始した後は、うまく行かない場合には、いったん元に戻って仕切り 直して、次の社会資源につなぎ戻すという、連続的な支援を提供することが肝要となる。 うまく行かない時も含めて、その時のその人のニーズに合った支援を対象者と一緒に試行 錯誤しながら考えていくという、“伴走型支援”、“寄り添い支援”などと呼ばれる支援 体制が推奨される。 F 自立を進めることで、孤立を増強させることがあることを常に想定しておく 生活困窮に陥ってしまった事情は、人によって様々であり、しかも、本人にとっては「不 名誉で人には話したくない」問題であるため、最も困っている本質的な問題を周囲に相談 できないまま追いつめられるという事態が時々生ずる。特に本人も努力し経過が順調であ ると、支援者は「がんばってますね」「良かったですね」という激励のメッセージを伝え がちになるが、これらが「支援者を失望させたくない」といった気持を強め、本質的な問 題を話題に出来ない状況に追い込むことがある。 経過が順調な時にも、本人が本音や弱音が吐けるような、声かけや見守りを忘れないこと が重要である。 G 孤立の解決に向けて互助(相互援助)が体験、実践できるような環境設定をおこなう 生活再建、自立が出来ても、社会的孤立が解決できなければ、本末転倒であり、孤立の解 決を目指した支援環境を整える工夫が必要である。 生活困窮者の多くは、自分は「価値のない人間である」「役に立たない人間である」とい う“自尊感情の低下”“自己有用感の低下”に陥っており、このことが、過度に相手の評 価を気にすることにつながり、安心して他者と交流することを妨げている。また、適切な 支援を受けていても、「支援してもらっている」という役割が固定化すると、さらに自己 有用感の低下は増強する。 H 福祉、介護、保健、医療、法律、警察、民間団体、地域コミュニティー等との連携、 人的交流(個別相談、連携会議の開催・協力、研修会等への相互協力等) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 相談先一覧 経済問題について 法テラス (平日)9:00〜21:00 (土)9:00〜17:00 (TELL)0570-078374 (HP URL)http://www.houterasu.or.jp/ 日本司法書士会連合会 (TELL)0120-55-2059 (HP URL)http://www.shiho-shoshi.or.jp/ 就職活動でお困りの方へ ジョブカフェ北海道[若年者向け] (平日)9:00〜19:00 (土)10:00〜17:00 (TELL)011-209-4510 (HP URL)http://www.jobcafe-h.jp/ ジョブサロン北海道[中高年者向け] (平日)9:00〜18:00 (TELL)011-206-4510 (HP URL)http://www.jobsalon-h.jp/ 参考文献 日本うつ病センター、『ワンストップ支援における留意点−複雑・困難な背景を有する人 々を支援するための手引き−』、2017 ******************************************************************************** 【3】お知らせ ◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。 月曜から金曜日 9:00〜21:00 土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く) 10:00〜16:00 Tel:0570-064-556 ※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。 ◇ HP・携帯版HPをご覧ください 北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。 パソコンHP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察 から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら も併せてご覧ください。 携帯HP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm ******************************************************************************** 【4】編集後記 時間が過ぎるのは早いもので、今年ももはや12月を残すのみとなりました。雪も根雪とな り、我が家でも日々暖房のお世話になっています。 最近の自殺に関するニュースを見ると、座間市で起きた事件が話題になっています。犯人 がSNSで「自殺」をキーワードとして、被害者を集めていたそうです。SNSの運営側や政府 は規制の強化について議論されているようです。一方で規制の過度な強化はヘルプを求め る人の声も聞こえ辛くしてしまうということもあり、難しい問題となっています。個人的 には、規制の強化よりも、ヘルプを出している人が適切な援助の受けられる機関へとつな げられるような対策を打って欲しいと思います。 いつもご愛読ありがとうございます。 次号Vol.102は、2017年12月末に配信予定です。 *お問い合わせ先* 北海道立精神保健福祉センター 札幌市白石区本通16丁目北6番34号 Tel 011-864-7121 Fax 011-864-9546 URL http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/ Mail hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp