=============================================================================== [北海道] H29.12.31 ・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。 Vol.102 〜北海道の自殺対策について〜 Hokkaido 発行:北海道地域自殺対策推進センター Government (北海道立精神保健福祉センター内) =============================================================================== ******************************************************************************** ※『Andante:アンダンテ』とは 「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって 適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす 中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています 。 -------------------------------------------------------------------------------- − 目 次 − 【1】 北海道における自殺の現状 ◇ 平成29年11月末の自殺者数(暫定値)[警察庁] ◇ 人口動態統計・警察庁統計の自殺者数年次推移比較[厚生労働省・警察庁] 【2】 自殺について知ろう ◇ 「指導死」について(1) 【3】 お知らせ ◇ こころの電話相談 ◇ HP及び携帯HPをご覧ください 【4】 編集後記 -------------------------------------------------------------------------------- ******************************************************************************** 【1】北海道における自殺の現状 ◇平成29年11月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 警察庁より平成29年11月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。 平成29年11月の北海道の自殺者数は68人でした。また、全国の自殺者数は1,536人、 そのうち男性は1,054人、女性は482人でした。 以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。 1.平成29年11月末と平成29年10月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H29年11月 68 1,536 1,054 482 H29年10月 83 1,622 1,134 488 前 月 比 -15 -86 -80 -6 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平成29年11月の自殺者数は、前月比で北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてにおい て減少しました。 都道府県別では、自殺者数が増加したのは16、減少したのは29、変化なしは2でした。 2. 平成29年11月末と平成28年11月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H29年11月 68 1,536 1,054 482 H28年11月 81 1,683 1,155 528 前 年 比 -13 -147 -101 -46 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 前年同月比では、北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてにおいて減少しました。 また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは13、減少したのは29、増減なしは5 でした。 ◇人口動態統計・警察庁統計の自殺者数年次推移比較[厚生労働省・警察庁]◇◇◇◇◇◇ 自殺の統計は大きく分けると2種類あります。厚生労働省が出す人口動態統計と、警察庁 が出す自殺統計です。この2種類の統計の自殺者数には若干の相違があります。これは、 人口動態統計における自殺の統計は日本に住む日本人が対象であるのに対し、警察庁によ る自殺統計は日本在住の外国人も含む総人口を対象としているからです。また、人口動態 統計は住所地を基に死亡時点で計上しますが、警察庁統計は発見地を基に発見時点で計上 するという違いがあります。他にも、人口動態統計は自殺・他殺・事故死いずれであるか 不明の場合には自殺以外として処理し、自殺である旨の訂正報告がない場合は自殺に計上 されませんが、警察庁統計は捜査等により自殺であると判明した時点で自殺統計原票が作 成され、計上されるという違いがあります。これらの事情から、この2つの自殺統計には 以下のような差が生じています。したがって、自殺者数を掲示する場合、どの統計を元に しているか明記することが重要です。 1.人口動態統計・警察庁統計の自殺者数年次推移比較(全国) (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 人口動態統計 警察庁統計 総数 男性 女性 総数 男性 女性 2007 30,827 22,007 8,820 33,093 23,478 9,615 2008 30,229 21,546 8,683 32,249 22,831 9,418 2009 30,707 22,189 8,518 32,845 23,472 9,373 2010 29,554 21,028 8,526 31,690 22,823 9,407 2011 28,896 19,904 8,992 30,651 20,955 9,696 2012 26,433 18,485 7,948 27,858 19,273 8,585 2013 26,063 18,158 7,905 27,283 18,787 8,496 2014 24,417 16,875 7,542 25,427 17,386 8,041 2015 23,152 16,202 6,950 24,025 16,681 7,344 2016 21,017 14,639 6,378 21,897 15,121 6,776 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 10年ほど前には2つの統計の総数の値は2,000人以上の開きがあったのですが、近年は差が 1,000人を割っています。 2.人口動態統計・警察庁統計の自殺者数年次推移比較(北海道) (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 人口動態統計 警察庁統計 総数 男性 女性 総数 男性 女性 2007 1,462 1,065 397 1,640 1,172 468 2008 1,546 1,092 454 1,726 1,215 511 2009 1,439 1,018 421 1,599 1,117 482 2010 1,392 986 406 1,533 1,074 459 2011 1,311 889 422 1,437 984 453 2012 1,206 856 350 1,296 916 380 2013 1,145 803 342 1,246 866 380 2014 1,080 740 340 1,151 793 358 2015 1,045 714 331 1,147 767 380 2016 930 664 266 1,004 714 290 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道の統計においても、10年前には2つの統計の総数の値は200近く差があったのが、こ こ数年は100を割っています。 ******************************************************************************** 【2】自殺について知ろう ◇「指導死」について(1)◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 2ヶ月ほど前に、福井県池田町の男子中学生が教員からの厳しい指導を苦に自死するとい う痛ましい事件があったことが報道されました。同様の自死は繰り返し起きており、この ような学校における行き過ぎた指導により追い込まれた末の自死は「指導死」と名付けら れています。北海道でも数年前に、指導死だったのではないかと思われる高校生の自死が あり、先月、生徒達からとったアンケートの開示請求についての報道がありました。そこ で、これまで取り上げてきていなかったテーマであることと、大貫隆志編著『指導死』と いう内容の充実した参考文献があることから、本書に依拠して、今回と次回の2回に分け て「指導死」についてお伝えしたいと思います。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「指導死」というのは、ご自身も指導死の遺族である参考文献の編著者である大貫さんが 造った言葉ですが、当初の思いとは異なる意味合いで言葉が浸透していくのを見て、定義 をしています。 1.一般に「指導」と考えられている教員の行為により、子どもが精神的あるいは肉体的 に追いつめられ、自殺すること。 2.指導方法として妥当性を欠くと思われるものでも、学校で一般的に行われる行為であ れば「指導」と捉える(些細な行為による停学、連帯責任、長時間の事情聴取・事実確認 など)。 3.自殺の原因が「指導そのもの」や「指導をきっかけとした」と想定できるもの(指導 から自殺までの時間が短い場合や、他の要因を見いだすことがきわめて困難なもの)。 4.暴力を用いた「指導」が日本では少なくなく、これらは本来は「暴行・傷害」と考え るべきだが、これによる自殺を広義の「指導死」と捉える場合もある。 すなわち、「指導死」における「指導」は、学校における「教員」と「生徒」の関わりの すべてが「指導」であると位置づけられており、「体罰による指導」のみをいうのではな いということです。暴力を用いない指導であっても、生徒を追いつめ、自死させてしまう ことがあることに警鐘を鳴らしているのです。 「指導死の特徴」 参考文献によると、1952年から2013年までにあった指導死と思われる68事例を分析すると 、指導死にはいくつかの共通する特徴が見られるそうです。 1.有形の暴力がなくても死ぬ いじめ問題では暴力がたとえなくても言葉や態度による攻撃だけでも自死してしまうこと があることは知られていると思いますが、教師の生徒指導においても、有形の暴力を伴わ なくても死ぬことがあります。というよりも、68事例においては、暴力を伴わないものが 暴力を伴うものの約3倍の件数あったようです。 2.絶対的権力関係の中で行われている 有形の暴力を伴うものであれ、伴わないものであれ、指導は教師と生徒という圧倒的な立 場の差の中で行われます。有形の暴力も、多くの場合、やり返される心配のない中で行わ れます。 よく暴力を振るう教師は、「言ってわからないから殴る」と言いますが、殴られた児童生 徒からは「いきなりビンタが飛んできた」「何に対して怒られているのかがわからなかっ た」「謝ったが許してもらえなかった」などの言葉を聞くこともあるとのことです。 3.複数の教師による指導 複数の教師が取り囲んで、あるいは複数の教師が入れ替わり立ち替わり長時間にわたって 指導するなどの例が多く見られるようです。 4.指導直後の自殺が多い 原因となる出来事や指導から自死までの時間が極端に短いのが指導死の特徴です。特に小 学生は教師の言動がきっかけで衝動的に自死することがあるので、より注意が必要です。 5.指導場面ごとの特徴 @教科に関わる指導 本人にとって多すぎる量や難しすぎる宿題や課題、それができなかったときのペナルティ が大きすぎる、他に救済の道がとられない、選択の余地がないなどのことが児童生徒を精 神的に追いつめています。 A問題行動に関わる生徒指導 明らかに生徒の行動に問題のあったものだけではなく、根拠のはっきりしない疑いや明ら かな勘違いによる指導や体罰、同じ行動や失敗をしても他の児童生徒と一人だけ違う対応 をとられるなど不公平感のあるもの、指導すべき行動よりも指導した際の反抗的な態度が 問題にされたり、自分や他の生徒の違反行為を告発させるものなどがあります。 B部活動に関わる指導 試合中のミスや試合に負けたこと、他部員への見せしめのための暴言や暴力行為、暴力的 指導だけではなく、レギュラーを外されたり、練習や試合に出られないこと、部活動をや めろと言われたこと、退部届を受理されなかった、などの事情が児童生徒を追いつめてい ます。 6.指導が正当化される たとえ子どもが指導によって自死に追い込まれても、学校や教師の指導が正当化されると いう特徴があります。「指導をうけるようなことをした子どもが悪い」「生徒のためを思 っての行為だった」「死んだ子どもがたまたま弱かった」などと主張されて学校や教師の 指導が正当化されます。ここには、子ども達の画一性を求め、教師に強い指導を望み、教 育に即効性を期待する社会の価値観が影響を与えているのかもしれません。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 参考文献には、実際の指導死の7事例が掲載されています。うち1件は部活での甚だしい暴 力的指導ですが、残りの6件は少なくとも有形の暴力を用いた指導ではありませんが、子 ども達は命を絶ちました。これらは一応、生徒の側に問題になる行動があった(あるいは あったかもしれない)という事例でしたが、広く指導死の中には、子どもの側に特に問題 行動があったわけではない事例もあります。さらに広げて、自死には至らないまでも、教 師の側からすれば良かれと思ってした指導の末に心が傷つき、二次障害になったり、不登 校になったり、うつのようになったりする子どももいます。教師は、自分の一方的な思い なのではないか、指導内容とその子どもの精神面や能力とバランスがとれているのか、自 分の指導が子どもにどのように受け取られ、どのような影響を与えているか、常に吟味す る必要があるということでしょう。 次回は「指導死(2)」として、指導によってどうして子どもが死に追いつめられてしま うのか、指導死を招かないためにどうしたらよいか、などについてお伝えしようと思いま す。 参考文献 大貫隆志編著(2013)『「指導死」追いつめられ、死を選んだ七人の子どもたち 。』高文研。 ******************************************************************************** 【3】お知らせ ◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。 月曜から金曜日 9:00〜21:00 土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く) 10:00〜16:00 Tel:0570-064-556 ※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。 ◇ HP・携帯版HPをご覧ください 北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。 パソコンHP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察 から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら も併せてご覧ください。 携帯HP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm ******************************************************************************** 【4】編集後記 皆様、こんにちは。 今年もいよいよ残すところあと数時間となりました。皆様にとって今年はどのような1年 でしたでしょうか。平成30年が皆様にとって幸多い年になることをお祈り申し上げます。 いつもご愛読ありがとうございます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。 次号Vol.103は、2018年1月末に配信予定です。 *お問い合わせ先* 北海道立精神保健福祉センター 札幌市白石区本通16丁目北6番34号 Tel 011-864-7121 Fax 011-864-9546 URL http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/ Mail hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp