=============================================================================== [北海道] H30.1.31 ・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。 Vol.103 〜北海道の自殺対策について〜 Hokkaido 発行:北海道地域自殺対策推進センター Government (北海道立精神保健福祉センター内) =============================================================================== ******************************************************************************** ※『Andante:アンダンテ』とは 「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって 適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす 中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています 。 -------------------------------------------------------------------------------- − 目 次 − 【1】 北海道における自殺の現状 ◇ 平成29年12月末の自殺者数(速報値)[警察庁] ◇ 平成29年の年間自殺者数(速報値)[警察庁] 【2】 自殺について知ろう ◇ 「指導死」について(2) 【3】 お知らせ ◇ こころの電話相談 ◇ HP及び携帯HPをご覧ください 【4】 編集後記 -------------------------------------------------------------------------------- ******************************************************************************** 【1】北海道における自殺の現状 ◇平成29年12月末の自殺者数(速報値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 警察庁より平成29年12月末の月別自殺者数の速報値が発表されました。 平成29年12月の北海道の自殺者数は60人でした。また、全国の自殺者数は1,386人、 そのうち男性は985人、女性は401人でした。 以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。 1.平成29年12月末と平成29年11月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H29年12月 60 1,386 985 401 H29年11月 68 1,536 1,054 482 前 月 比 -8 -150 -69 -81 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平成29年12月の自殺者数は、前月比で北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてにおい て減少しました。 都道府県別では、自殺者数が増加したのは13、減少したのは30、変化なしは4でした。 2. 平成29年12月末と平成28年12月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H29年12月 60 1,386 985 401 H28年12月 69 1,566 1,079 487 前 年 比 -9 -180 -94 -86 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 前年同月比においても、北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてにおいて減少しまし た。 また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは17、減少したのは26、増減なしは4 でした。 ◇平成29年の年間自殺者数(速報値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 平成29年12月の速報値が出たところで、今回は全国及び北海道の平成29年中の自殺者数に ついて概観したいと思います。後日確定値が出ましたら、あらためてご報告します。 1.平成29年と平成28年の北海道と全国の年間自殺者数 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H29(速報値) 997 21,140 14,693 6,447 H28(確定値) 1,004 21,897 15,121 6,776 前 年 比 -7 -757 -428 -329 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平成29年中の自殺者数は、前年に比べ北海道・全国・全国(男性)・全国(女性)の全てにお いて減少しました。都道府県別でみると、増加は16、減少は31、増減なしは0でした。 2.平成29年と平成28年の北海道における月別自殺者数 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 H29(速報値) 85 78 86 79 104 95 95 86 78 83 68 60 H28(確定値) 90 74 73 99 83 88 96 74 91 86 81 69 前 年 比 -5 +4 +13 -20 +21 +7 -1 +12 -13 -3 -13 -9 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 月別では、平成29年の北海道で自殺者数が最も多かったのは5月の104人でした。最も少な かったのは12月の60人でした。 また、前年よりも月別自殺者数が増えたのは2月、3月、5月、6月、8月で、他の月は前年 よりも減少しました。 3.平成29年と平成28年の全国における月別自殺者数 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1月 2月 3月 4月 5月 6月 H29(速報値) 1,805 1,631 1,911 1,929 2,009 1,859 H28(確定値) 1,851 1,729 2,113 1,880 2,065 1,862 前 年 比 -46 -98 -202 +49 -56 -3 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 7月 8月 9月 10月 11月 12月 H29(速報値) 1,826 1,824 1,802 1,622 1,536 1,386 H28(確定値) 1,862 1,701 1,765 1,820 1,683 1,566 前 年 比 -36 +123 +37 -198 -147 -180 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 月別にみると、平成29年の全国で自殺者数が最も多かったのは5月の2,009人、最も少なか ったのは12月の1,386人でした。 また、前年よりも月別自殺者数が増えたのは4月、8月、9月でした。 ******************************************************************************** 【2】自殺について知ろう ◇「指導死」について(2)◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 前回の「自殺について知ろう」では、大貫隆志編著『指導死』に依拠して「指導死」とは どういうものかについてお伝えしました。今回は引き続き指導死に関して、指導によって どうして子どもが死に追いつめられるのか、また、指導死を招かないためにどうしたらよ いか、などについて、大貫隆志編著『指導死』に依拠してお伝えします。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「子どもを死に追いつめるもの」 参考文献『指導死』では、指導を受けた子どもが自死に追い込まれてしまう要因について 、Andante vol.93でもご紹介したジョイナーの「自殺の対人関係理論」の3要因(以下の @〜B)を含む8要因が提示されています。 @所属感の減弱 小、中、高校時代は仲間が親以上に大切な時期であるところ、指導による部活の停止や他 生徒の行為についての密告強要、他生徒の前での強い叱責、違反行為の発覚などは、仲間 との関係を分断し、仲間集団への所属感を減弱します。 A負担感の知覚 勉強、部活などの、頑張っても報われない思い、学校からの親への呼び出しや部活動停止 などの罰は、親に申し訳ないなどの負担感を増大させてしまいます。 B身についた自殺潜在能力 継続的な体罰や部活動での激しい練習、暴力を伴う指導は、困難に負けない強い精神を養 ってほしいという思いからではあっても、自殺に伴う痛みや死への恐怖を乗り越える力に なってしまう可能性があります。 C強い怒りの感情 教師の暴力に対する理不尽だという思い、自分だけがという不公平感、無実であるのに疑 われ、説明しても信じてもらえないなどの、本来教師に向けられるはずの怒りが自分に向 かったり、他に抵抗する手段を見つけられないなかで、抗議として自死することもありま す。 D強い後悔の念 もともと優等生であったり、まじめな子どもが、うっかりミスをしたり、後先考えずに軽 い気持ちで問題行動を起こしてしまった場合に、強い後悔の念が自死に走らせることがあ ります。 E未来への希望が断たれたとき 有無を言わせない体罰や厳罰、教師の頑なな態度や決めつけなどにより、生徒が自分の思 いや事実をわかってもらえないと、もう自分はおしまいだと思い込んでしまいます。もは や自分の居場所はないとの思いが自死へと向かわせるのでしょう。 F強い恐怖感や嫌悪感 暴力や暴言に対して強い嫌悪感や死ぬほどの恐怖感を抱く人は、なんとしてもそれから逃 れようとします。 G心身の疲労 試験勉強で寝不足が続いていたり、部活動などで疲労しているとき、空腹時などに指導を 受けたときに、自死に追い込まれます。大人の過労自殺とも共通する要素かと思いますが 、肉体的な疲労はマイナス思考に陥りやすくします。 「指導死を招かないために」 国立教育政策研究所生徒指導研究センターが、懲戒はあくまでも教育的な観点に基づいて 行われる必要があるとして、「懲戒を実施する上での留意点」を作成しています。少し長 いですが引用します。 @教育的観点から安易な判断のもとで懲戒が行われることがないよう、その必要性を慎重 に検討して行うこと。 A適正な手続きを経て処分を決定すること。(適正な手続きとは、例えば、十分な事実関 係の調査、本人等からの事情聴取等弁明の機会の設定、保護者を含めた必要な連絡や指導 、適切な処分方法等の通知、など) B体罰に該当するような懲戒は認められないこと。(体罰に該当するような懲戒とは、ア :例えば、殴る、蹴るなどの身体に対する侵害を内容とする懲戒。イ:例えば、特定の姿 勢を長時間にわたって保持させるなどの肉体的な苦痛を与えるような懲戒、などが考えら れる) C日常の叱責や注意のあり方に留意すること ア:その場の環境や対象となる児童生徒の発達段階や実態に応じて効果が変わるので、的 確な判断が必要であること(機械的、形式的な処置であってはならないこと)、 イ:懲戒の理由が児童生徒等に理解されていること、 ウ:公平であること(不公平、不当さがあるような処置であってはならないこと)、 エ:感情的であったり、他の子ども達への見せしめであるような処分ではないこと、 オ:教師間で指導や処分に差やブレが生じないようにすること、 カ:処分中又は事後の教育的な指導を適切に行うこと、 などが考えられる)。 「指導する教師へのメッセージ」 指導死は他の自死とは違って、指導直前、指導中、指導直後に起きることが多いというこ とは、教師が子どもを追いつめないような指導をすることでしか、防止する手立てはあり ません。子どもは間違いを繰り返しながら成長していくものであり、衝動的で、視野狭窄 になりやすいということを十分に念頭に置いて指導する必要があります。 大人でさえ、犯罪が発覚したときに、自殺防止の観点から警察が容疑者の身柄を拘束する ことがあります。子どもであればなおさら安全への配慮から、「指導中に一人にしない」 「目を離さない」ことが重要です。帰宅させる際にも、ケアにつながる言葉がけをし、保 護者に引き渡すまで一緒にいる、保護者に対してもあまり強く叱らないようお願いするな どのフォローが必要です。 反省しているように見えないとか、そんなに落ち込んでいるようには見えないからといっ て、反省していない、落ち込んでいないとは限りません。誰もが表情豊かに内面を表すわ けではないということも念頭に置いておく必要があると思われます。「指導をした後、こ の生徒をこのまま帰らせて本当に大丈夫か、最悪の事態が起こることがないか、常に考え て指導している」と、以前に生徒に指導死させてしまった教師の言葉が参考文献に載って います。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 前後2回、「指導死」についてお伝えしましたが、実は家庭で起こる「指導死」とも考え られる「家族からのしつけ・叱責」を原因・動機とする小・中・高校生の自死は、昨年1 年間だけでも警察庁の統計上、20件ありました。これは学校での指導死よりもはるかに高 率に起きているとみることができます。もちろん、数の大小ではありませんが、子どもは 何度も間違いを繰り返しながら成長する、その成長を見守り待つという姿勢が、親・教師 に関わらず大人に求められるのだなとあらためて思いました。 参考文献 大貫隆志編著(2013)『「指導死」追いつめられ、死を選んだ七人の子どもたち 。』高文研。 ******************************************************************************** 【3】お知らせ ◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。 月曜から金曜日 9:00〜21:00 土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く) 10:00〜16:00 Tel:0570-064-556 ※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。 ◇ HP・携帯版HPをご覧ください 北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。 パソコンHP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察 から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら も併せてご覧ください。 携帯HP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm ******************************************************************************** 【4】編集後記 ご挨拶が少し遅くなりましたが、みなさま新年おめでとうございます。 2018年になってはや1ヶ月が経過してしまいましたが、今年がみなさまにとって幸多い年 であることをお祈り申し上げます。 本年も「Andante」のご愛読をどうぞよろしくお願い申し上げます。 次号Vol.104は、2018年2月末に配信予定です。 *お問い合わせ先* 北海道立精神保健福祉センター 札幌市白石区本通16丁目北6番34号 Tel 011-864-7121 Fax 011-864-9546 URL http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/ Mail hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp