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[北海道]                                 H30.6.30
・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。  Vol.108
              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
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※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています
。
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− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 平成30年5月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]
◇ 平成29年中の原因・動機別自殺者数(確定値)[警察庁発表]
【2】 自殺について知ろう
◇ NOCOMIT-Jについて(2)
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP及び携帯HPをご覧ください
【4】 編集後記
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【1】北海道における自殺の現状

◇平成30年5月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
警察庁より平成30年5月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。
平成30年5月の北海道の自殺者数は85人でした。また、全国の自殺者数は1,813人、そのう
ち男性は1,222人、女性は591人でした。
以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1.平成30年5月末と平成30年4月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
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H30年5月<北海道  85人、全国 1,813人、全国(男性) 1,222人、全国(女性)  591人>
H30年4月<北海道  81人、全国 1,786人、全国(男性) 1,216人、全国(女性)  570人>
前 月 比<北海道  +4人、全国 +27人、全国(男性)  +6人、全国(女性)  +21人>
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平成30年5月の自殺者数は、前月比では北海道・全国・全国男性・全国女性において増加
でした。都道府県別では、自殺者数が増加したのは24、減少したのは21、変化なしは2で
した。

2. 平成30年5月末と平成29年5月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
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H30年5月 <北海道 85人、全国 1,813人、全国(男性) 1,222人、全国(女性) 591人>
H29年5月 <北海道 104人、全国 2,024人、全国(男性) 1,387人、全国(女性) 637人>
前 年 比 <北海道 -19人、全国  -211人、全国(男性)  -165人、全国(女性) -46人>
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前年同月比では、北海道・全国・全国男性・全国女性において減少でした。また、都道府
県別でみると、自殺者数が増加したのは12、減少したのは32、増減なしは3でした。

◇平成29年中の原因・動機別自殺者数(確定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今月は先月に引き続き警察庁『平成29年中における自殺の概況』(確定値)、および厚生
労働省「地域における自殺の基礎資料」(発見日・発見地集計)より北海道における男女
別原因・動機別自殺者数をまとめます。表中()内は前年比です。

1. 北海道における平成29年中の原因・動機別別自殺者数、および前年比 (単位:人)
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道内自殺者総数 総数 1,001人( 0%)、男性 679人 ( -5%)、女性 322人(+11%)

家 庭 問 題  総数  194人(+17%)、男性 124人(+16%)、女性  70人( +19%)
健 康 問 題  総数  361人( +3%)、男性 189人 ( -1%)、女性 172人(  +8%)
経済・生活問題 総数  168人(-11%)、男性 142人(-14%)、女性  26人 ( +18%)
勤 務 問 題  総数  109人( -6%)、男性  94人( -9%)、女性  15人 ( +15%)
男 女 問 題  総数 52人(+30%)、男性  35人(+25%)、女性  17人 ( +42%)
学 校 問 題  総数 11人(-27%)、男性  10人( -9%)、女性   1人 ( -75%)
そ の 他    総数    54人( +8%)、男性 40人(+11%)、女性  14人 (  0%)
不 詳      総数 336人( -5%)、男性 236人( -9%)、女性  100人( +4%)
合 計      総数 1,285人(+1%)、男性 870人( -3%)、女性  415人( +9%)
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※原因動機を3つまで計上可能としているため、総数と原因・動機別自殺者数の和は一致
しない。

平成29年北海道における男女別、原因・動機別の自殺者数をみると、「不詳」・「その他
」を除くと「健康問題」が最も多く、次に「家庭問題」、「経済・生活問題」、「勤務問
題」と続きます。男女別にみると、男性、女性ともに「健康問題」が一番多く、男性は次
に「経済・生活問題」、女性は「家庭問題」と続いています。
前年比をみると、「家庭問題」・「健康問題」・「男女問題」・「その他」において増加
、「経済・生活問題」・「勤務問題」・「学校問題」・「不詳」において減少がみられま
した。男女別にみると、男性は「家庭問題」・「男女問題」・「その他」において増加、
女性は「学校問題」・「その他」以外の全ての原因・動機において増加が見られました。

参考文献
厚生労働省、「地域における自殺の基礎資料」

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【2】自殺について知ろう

◇NOCOMIT-Jについて(2)◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回も前回に引き続きNOCOMIT-Jについてご紹介させていただきます。前回のAndanteでは
、NOCOMIT-Jの概要、達成目標についてご紹介させていただきました。今回は、NOCOMIT-J
の概要でも触れた複合的自殺対策プログラムについてまとめていきたいと思います。

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こころの健康づくりネットワーク
複合的、総合的な自殺対策を進めるためには、自殺対策が地域の課題であるという認識を
地域の集団構成員で共有し、部門を越えた協力体制を形成することが必要になります。全
都道府県・市的な事業としてのコンセンサスを得るために関係部署・機関等のネットワー
ク会議を立ち上げてネットワーク作りを行い、ネットワーク会議を開催します。構成メン
バーは、総務部局、衛生部局、民生部局、医師会、薬剤師会、看護協会、精神保健福祉セ
ンター、保健所、弁護士会、司法書士会、警察、消防、地元大学、労働局、職業安定所、
産業保健推進センター、自死遺族の会、報道機関、女性団体、推進員協議会、社会福祉協
議会、公的病院、NPO法人等が候補者となります。ネットワークの立ち上げ、運営には、
地域のトップの理解が非常に大きな力となります。
ネットワークは、生きやすい社会、住みやすい地域の実現を目指すものであり、自殺対策
だけではなく、他の分野にも広がりを持たせるようにします。そして、ここでの議論を元
に以下のようなアプローチを行います。

社会システムへのアプローチ
地域の保健福祉活動の枠組みを越えた複合的自殺対策(自殺の手段に関する情報へのアク
セス機会の制限〔書籍、インターネット等〕、自殺可能な場所への立ち入り禁止、鉄道ホ
ームへの柵の設置、農薬等劇薬物の規制等)を実施するため、上記のネットワーク会議に
おいて具体的な地域介入方法を検討し、管轄の部署、事業所等への働きかけを行います。
なお、インターネットの違法・有害情報対策は、IT安心会議:インターネット上における
違法有害情報対策(内閣官房)、関連省庁の動向と連携して行います。

一次予防住民全体へのアプローチ
自殺の一次予防としては、こころの健康を高め孤立を防ぐ地域づくり、一般住民向け、地
域のキーパーソン向け普及啓発を行います。
<地域づくり>自殺が多い地域では、住民が「働けなくなったら死んだほうがましだ」と
いう「非生産者は不要」という考えを持ったり、世代間の価値観の違いに悩んだりしてい
ることが多いとされています。自分の存在価値への疑問、価値観の違いによる孤立感や無
力感、こうした状況を改善するためには、地域の人間的なつながりを再構築できるような
温かいコミュニティ作りに取り組む必要があります。
<啓発活動の方法>パンフレットやポスター・カード・ティッシュ等のグッズ、市区町村
広報誌講演用スライド、ホームページ、メールマガジン等を用いて、関係機関・団体との
連携をもとに様々な機会を利用して、自殺対策に関する普及啓発を行います。こうした活
動の際には、精神面だけではなく、身体的な問題への配慮も含めて、情報のバランスをと
るようにする。精神保健に関する普及啓発の内容は、一次予防、二次予防、三次予防のそ
れぞれの視点を盛り込むようにします。
<一般住民向け普及啓発>健康祭り等のイベントや市区町村単位での講演会・市民講座、
各種集団検診等の会場、介護予防教室、健康教室等の保健事業、学校教育機関の場におい
て、自殺対策に関する普及啓発用媒体の配布を行い、自殺対策に関連したDVDやビデオを
放映、パネルやポスターの掲示、パンフレット等の配布を行います。また、参加者を対象
に、地域の精神科医、精神保健福祉センターや大学と連携してこころの健康相談等を行い
ます。他にも、こころの健康度調査の実施、マスコミ等の活用も挙げられます。
<地域のキーパーソン向け普及啓発>保健推進員や民生児童委員、ケアマネージャー、老
人クラブ会員、婦人会員、青年会等を対象とした講話、保健所や医師、保健師、看護師等
へ研修会を実施して、資質の向上と維持を図ります。他にも、こころの悩み相談員の養成
、マスコミ従事者を対象とした自殺関連報道の倫理性、注意点に関する研修会を実施しま
す。さらに、医療従事者向け研修会やこころのケアナース養成事業などを行い、精神科以
外の診察科の医師や看護師の対応力の向上も目指します。

二次予防ハイリスク者へのアプローチ
世界保健機関WHOの報告によれば、自殺者の9割以上が自殺直前には何らかの精神疾患にか
かっていると診断できる状態にあるとされており、精神疾患へのアプローチは、地域住民
の自殺対策において重要な意義をもっています。地域保健医療従事者は、こうした精神疾
患のために受診中の地域住民に対しては、自殺リスクがあることを常に念頭において本人
や家族を支援していくことが大切です。
精神疾患に対するアプローチでは、これまで早期発見、早期介入の重要性が指摘されてき
ました。早期の対応が重要であることは確かですが、うつ病をはじめとする精神疾患は慢
性化することが多いことから、すでに受診している患者や家族に対する息の長い支援が必
要です。
なお、精神障害者への支援は地域だけでできるものではなく、精神保健医療福祉の充実が
不可欠であることから、2009年(平成21年)9月24日に厚生労働省「今後の精神保健医療
福祉のあり方等に関する検討会」が発表した提言『精神保健医療福祉の更なる改革に向け
て』が実行に移されることが、自殺対策でも極めて重要な意味を持ちます。
<相談や訪問等の支援>保健所や市区町村保健センター、精神保健福祉センターにて相談
窓口を設置します。また、市区町村や保健所、医療機関連携による家庭訪問を行い、心の
健康相談窓口の紹介、講演会等の情報を提供します。専門医を交えた地域カンファレンス
や専門医と保健師の同伴相談、精神疾患・身体疾患による医療機関受診者の相談・支援体
制整備も必要になります。
<うつ病へのアプローチ>スクリーニングは、各種集団検診・健康診査等、介護予防家族
教室・健康教室等で実施します。実施に際しては、書面または口頭で十分な説明を行った
上で一次スクリーニングを行います。一次スクリーニング陽性者に対して、保健医療従事
者による面接による二次スクリーニングを実施します。治療が必要と判断された場合には
、受診を勧めます。また、治療の必要性は認めないが経過観察が必要と判断された場合に
は、保健師等による見守り活動、民生児童委員等による声かけを行い、定期的に受診の必
要性をケースカンファレンスで再評価します。
<統合失調症へのアプローチ>特に社会的偏見の是正・解消を念頭におく必要があります
。社会的偏見は、自尊心の喪失、症状の悪化、家族の絆の崩壊、ストレスの増大、サポー
トの劣化、社会的支援の欠如などに関係して当事者の耐性を低下させます。具体的には社
会資源の把握・連携、地域でのイベント、相談窓口の設置、訪問指導、ACTの活用などが
挙げられます。
<物質関連障害(特にアルコール関連障害)へのアプローチ>地域の自助グループ(AA、
断酒会、DARC、アラノン)、家族会、ボランティア活動、民生児童委員、地域生活センタ
ー、保健所、市区町村、地域包括支援センター、精神保健福祉センター、地域医師会、精
神科病院等など社会資源を把握するとともに、こころの健康づくり・自殺対策連絡会等で
の連携を通じた地域ネットワーク構築を行う必要があります。そして、アルコール問題を
テーマとするイベントや研修会の開催、地域や職場での健康教育、自主グループや支援団
体の育成・強化等を行っていきます。
<自殺未遂者ケアガイドラインに基づく対応>
ダウンロード http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/
<学校における生徒への対応>
ダウンロード http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/gaiyou/12591
86.htm

三次予防自死遺族へのアプローチ
自死遺族が近親者の自殺を自らの責任であるかのように捉え、隣人や地域との交流を閉ざ
して苦しむことがないように配慮し、必要なときに適切なケアを提供します。
こころの健康づくり連絡会などで自死遺族のニーズの理解を図り、必要なときに適切な支
援が行えるように支援体制を作ります。また、事例発生時には、警察や自治体など関係各
機関が、自殺遺族の気持ちに十分に配慮できるような啓発活動を行います。自死遺族への
支援については、自死遺族や家族、周囲の人たちが相談窓口を見つけられるようなパンフ
レットを作成し、必要に応じて警察や救急医療機関などがパンフレットを提供できるよう
にします。
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今回は、前回まとめたNOCOMIT-Jの「概要」・「達成目標」に続き、具体的内容である複
合的自殺対策プログラムの中から、「心の健康づくりネットワークの作成」、そして「社
会的アプローチ」、「一次予防住民全体へのアプローチ」、「二次予防ハイリスク者への
アプローチ」、「三次予防自死遺族へのアプローチ」についてまとめました。連載最後と
なる次回は、NOCOMIT-Jの成果や実際に行われた事例についてご報告したいと思います。

参考文献
大野裕(2015)「自殺対策の効果と、その評価(3)−複合的自殺対策プログラムの自殺
企図予防効果に関する地域介入NOCOMIT-J」,本橋豊編,『よくわかる自殺対策』,24-28,ぎ
ょうせい.
大野裕(2010)『NOCOMIT-J−地域における自殺対策プログラム』.

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【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
月曜から金曜日                    9:00〜21:00
土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)   10:00〜16:00
Tel:0570-064-556
※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して
おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。
パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察
から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら
も併せてご覧ください。
携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

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【4】編集後記

北海道は一時暖かくなったものの、まだまだひんやりとした日々が続いています。
さて、毎年厚生労働省より発行されている『自殺対策白書』が先日閣議決定されました。
それを取り扱ったニュースによると、やはり若年者の自殺に問題意識が向けられているよ
うです。自殺者数、自殺率は減少してきているものの、若年者に限ってみると変化がない
、あるいは小さく、先進国だけみると、若年者の死因第一位が自殺というのは日本だけで
あるとのお話でした。
この問題についてはこれからのAndanteでも取り扱っていきますので、お待ちいただけれ
ばと思います。

いつもご愛読ありがとうございます。
次号Vol.109は、2018年7月末に配信予定です。

                                                        *お問い合わせ先* 
                                                北海道立精神保健福祉センター
                                               札幌市白石区本通16丁目北6番34号
                                                              Tel 011-864-7121
                                                              Fax 011-864-9546
                                    URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                                    Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp