=============================================================================== [北海道] H30.9.30 ・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。 Vol.111 〜北海道の自殺対策について〜 Hokkaido 発行:北海道地域自殺対策推進センター Government (北海道立精神保健福祉センター内) =============================================================================== ******************************************************************************** 北海道胆振東部地震より被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に謹んでお見舞い申し 上げます。一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。 ※『Andante:アンダンテ』とは 「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって 適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす 中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター では皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています。 -------------------------------------------------------------------------------- − 目 次 − 【1】 北海道における自殺の現状 ◇ 平成30年8月末の自殺者数(暫定値)[警察庁] ◇ 自殺未遂の状況[厚生労働省] 【2】 自殺について知ろう ◇ 子どもの自殺予防について 【3】 お知らせ ◇ こころの電話相談 ◇ HP及び携帯HPをご覧ください 【4】 編集後記 -------------------------------------------------------------------------------- ******************************************************************************** 【1】北海道における自殺の現状 ◇平成30年8月末の自殺者数(暫定値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 警察庁より平成30年8月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。 平成30年8月の北海道の自殺者数は77人でした。また、全国の自殺者数は1,650人、 そのうち男性は1,100人、女性は550人でした。 以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。 1.平成30年8月末と平成30年7月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H30年8月 77 1,650 1,100 550 H30年7月 92 1,695 1,160 535 前 月 比 -15 -45 -60 +15 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平成30年8月の自殺者数は、前月比で北海道、全国、全国男性において減少し、全国女性 において増加しました。 都道府県別では、自殺者数が増加したのは23、減少したのは22、変化なしは2でした。 2. 平成30年8月末と平成29年8月末の月別自殺者数の比較 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 北海道 全国 全国(男性) 全国(女性) H30年8月 77 1,650 1,100 550 H29年8月 87 1,852 1,291 561 前 年 比 -10 -202 -191 -11 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 前年同月比では、北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてにおいて減少しました。 また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは12、減少したのは32、変化なしは3 でした。 ◇自殺未遂の状況 [厚生労働省]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 厚生労働省から平成30年版の自殺対策白書が公開されました。その中から厚生労働省によ る平成29年の自殺未遂歴有無別自殺者数、消防庁による平成28年における自損行為による 救急自動車の出動件数及び搬送人数の推移について報告します。 1.平成29年における自殺未遂歴の有無別自殺者数 (単位:人) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 総数 男性 女性 全国自殺者総数 21,321人(-2.6%) 14,826人(-2.0%) 6,495人(-4.1%) 全国自殺未遂歴あり 4,029人(-6.5%) 2,100人(-9.4%) 1,929人(-3.0%) 全国自殺未遂歴なし 13,368人(-2.2%) 9,799人(-0.7%) 3,569人(-6.0%) 全国自殺未遂歴不詳 3,924人(+0.1%) 2,927人(-0.1%) 997人(+0.4%) 北海道自殺者総数 1,001人(-0.3%) 679人(-4.9%) 322人(+11.0%) 北海道自殺未遂歴あり 214人(+9.7%) 109人(+1.9%) 105人(+19.3%) 北海道自殺未遂歴なし 594人(-3.3%) 424人(-7.2%) 170人(+8.3%) 北海道自殺未遂歴不詳 193人(-1.0%) 146人(-2.7%) 47人(+4.4%) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ※( )内は前年比 平成29年における自殺者の自殺未遂歴の有無について、全国をみると、自殺未遂歴あり・ なし共に、男性・女性のすべてにおいて減少しています。 北海道では、昨年と比較して、自殺者総数は減少していますが、自殺未遂歴ありにおいて は、男女とも増加しています。特に女性での増加が大きくなっています。自殺未遂歴なし においては、男性は減少、女性は増加しています。 北海道女性の自殺未遂歴あり・なし共に増加していることについては、北海道女性の自殺 者総数が昨年と比較して増加していることが関係していると思われます。 全国においては、4年間連続で自殺未遂歴あり・なし共に減少していますが、北海道では 、未遂歴ありの減少傾向はあるものの減少幅が少なく、特に女性はあまり変化がありませ ん。自殺未遂歴ありの者、特に女性の自殺未遂歴ありの者への自殺対策が必要となってい ます。 2.平成28年中の自損行為による救急自動車の出動件数及び搬送人数の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 出動件数 搬送人数 搬送人数総数に占める 自損行為の割合 H28全国 54,302件(-4.6%) 37,054人(-3.6%) 0.7% H27全国 56,891件(-5.4%) 38,425人(-5.7%) 0.7% H28北海道 2,804件(-4.8%) 1,970人(-5.0%) 0.9% H27北海道 2,946件(-5.6%) 2,074人(-7.0%) 1.0% −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ※( )内は前年比 自損行為による救急自動車と搬送人数は平成21年の出動件数74,262件、搬送人数52,630人 をピークに、その後はともに減少を続けています。平成28年中の自損行為による救急自動 車の出動件数と搬送人数は、前年と比較して全国・北海道ともに減少しています。搬送人 数総数に占める自損行為の搬送人員の比率においては、全国ではほぼ横ばいで推移してい ます。北海道では、全国よりも少し高い割合で推移していましたが差が縮まりつつありま す。 参考資料:厚生労働省「平成30年版自殺対策白書」 厚生労働省「地域における自殺の基礎資料」 消防庁「救急救助の現況」 ******************************************************************************** 【2】自殺について知ろう ◇子どもの自殺予防について◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 前回の編集後記でもご紹介しましたが、8月に自殺総合対策推進センターから、「通学適 齢期の自殺者数に関する分析【速報版】」が公表されました。児童生徒の自殺が特に夏休 み後半から夏休み明けの、この時期に多くなる傾向があるとのことです。また若年層での 自殺者数は、他の年齢層の減少と比べても減少幅が少なく、深刻な問題となっています。 そこで今回は子どもの自殺予防についてまとめていきます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 子どもの自殺となると、学校でのいじめについてはメディアで大きく報道されることで注 目されることが少なくないですが、子どもの自殺の要因はいじめだけとは限りません。子 どもの自殺の要因には、次のようなものがあります。1.学校要因(いじめ、学業不振、教 師による不適正な指導)、2.個人要因(精神疾患の発症、哲学的な悩み)、3.家庭要因(家庭 で十分なサポートを受けることができない状況)です。これらのどれかひとつが大きく影 響していることもありますが、多くはこれらすべてが複雑に関係し合って、自殺へと気持 ちが傾いていくことと考えられます。 自殺に追い詰められる子どもの心理としては、「誰も自分のことを助けてくれるはずがな い」「居場所がない」といった孤立感に陥ってしまうことや、「私なんかいない方がいい 」「生きていても仕方がない」といった無価値感や、また、自分の気持ちをうまく表現で きず怒りとして表してしまうこと、苦しみが永遠に続くと思い込み絶望的な感情に陥って しまうこと、さらには自殺以外の解決方法が全く思い浮かばなくしていることが挙げられ ます。 自殺の危険因子としては、@自殺未遂歴A精神疾患B周囲からサポートが得られない状況 C他者の死の影響D安全や健康を守れない傾向(事故傾性)E虐待です。自殺の危険因子が 多くみられる子どもに、普段とは違った顕著な行動の変化がみられる場合、自殺を考えて いるサインではないかと考える必要があります。特に言葉での表現が苦手な子どもは、態 度に表れる微妙なサインに注意する必要があります。 子どもへの対応については、年少の子どもでは言語が未発達な部分から、追い詰めるよう な叱り方が突発的な自殺を招いてしまう危険があるため、注意しなければなりません。中 学・高校生世代では、良い対応として「TALK」の原則(Andante vol.47にも掲載)が当ては まります。以下に「TALK」の原則について掲載します。 Tell:言葉に出して心配していること伝える。 Ask:「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねる。 Listen:絶望的な気持ちを徹底的に傾聴する。 Keep safe:安全を確保する。危ないと思ったらその子どもを一人にさせない。本人の安 全を確保したうえで、周囲の人々の協力も得て適切な対処をする。 自殺予防のためには、学校・家庭・地域、必要であれば医療機関等との連携が重要です。 誰かひとりだけで支えようとしたり、他の人に責任を押しつけようとしたりせずに、それ ぞれ協力して、子どもが危機を乗り越えるのを手助けする必要があります。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 引用文献 高橋祥友,(2018),『青少年の自殺予防』,松原六郎編,『日本精神科病院協会雑誌』,37・6, 52-59. 厚生労働省,(2018),「平成30年版自殺対策白書」 文部科学省,(2014),「子どもに伝えたい自殺予防」 文部科学省,(2009),「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」 ******************************************************************************** 【3】お知らせ ◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。 月曜から金曜日 9:00〜21:00 土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く) 10:00〜16:00 Tel:0570-064-556 ※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。 ◇ HP・携帯版HPをご覧ください 北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。 パソコンHP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察 から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら も併せてご覧ください。 携帯HP URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm ******************************************************************************** 【4】編集後記 9月10日から16日は自殺予防週間でした。自殺予防に対しての取り組みはこの一週間のみ ではありませんが、さまざまな媒体を活用し、自殺についての正しい知識を幅広く知って もらうことを目標とした取り組みです。これをきっかけに改めて自殺対策について広がる ことを願っています。 いつもご愛読ありがとうございます。 次号Vol.112は、2018年10月末に配信予定です。 *お問い合わせ先* 北海道立精神保健福祉センター 札幌市白石区本通16丁目北6番34号 Tel 011-864-7121 Fax 011-864-9546 URL http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/ Mail hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp