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[北海道]                                 R元.6.30
・゚・*:.。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。...:゚・*:.。  Vol.120
              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
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※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています。
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− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 令和元年5月末の自殺者数(速報値)[警察庁発表]
◇ 平成30年中の職業別自殺者数(確定値)[警察庁発表]
【2】 自殺について知ろう
◇ 若者の自殺対策 SNSの利用
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP及び携帯HPをご覧ください
【4】 編集後記
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【1】北海道における自殺の現状

◇令和元年5月末の自殺者数(速報値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
警察庁より令和元年5月末の月別自殺者数の速報値が発表されました。
令和元年5月の北海道の自殺者数は93人でした。また、全国の自殺者数は1,791人、そのう
ち男性は1,257人、女性は534人でした。
以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1.令和元年5月末と平成31年4月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
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R元年5月<北海道  93人、全国 1,791人、全国(男性) 1,257人、全国(女性)  534人>
H31年4月<北海道  85人、全国 1,759人、全国(男性) 1,247人、全国(女性)  512人>
前 月 比<北海道  +8人、全国 +32人、全国(男性) +10人、全国(女性) +22人>
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令和元年5月の自殺者数は、前月比では、北海道・全国・全国男性・全国女性において増
加でした。都道府県別では、自殺者数が増加したのは25、減少したのは19、変化なしは3
でした。

2. 令和元年5月末と平成30年5月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
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R元年5月 <北海道  93人、全国 1,791人、全国(男性) 1,257人、全国(女性)  534人>
H30年5月<北海道  94人、全国 1,863人、全国(男性) 1,260人、全国(女性)  603人>
前 年 比<北海道  -1人、全国 -72人、全国(男性)  -3人、全国(女性) -69人>
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前年同月比では、北海道・全国・全国男性・全国女性において減少でした。また、都道府
県別でみると、自殺者数が増加したのは16、減少したのは27、増減なしは4でした。

◇平成30年中の職業別自殺者数(確定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回は、警察庁『平成30年中の自殺者数』(確定値)、および厚生労働省「地域における
自殺の基礎資料」(平成30年確定値)から、北海道における職業別自殺者数をご報告しま
す。

平成30年北海道の職業別自殺者数、前年比増減率、構成比(単位:人、%)
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         H30自殺者数  前年比増減率  H30構成比  H30全国構成比
総数         998      -0.3%     100%     100%
自営業・家族従事者  80      +9.6%      8%      7%
被雇用者・勤め人   336      +8.7%     34%      31%
学生・生徒等     30       -16.7%     3%      4%
主婦         42       -23.6%     4%      5%
失業者        48       +45.5%     5%      3%
年金・保険等生活者  238      -8.8%     24%      26%
その他無職者     211      -5.4%     21%      22%
不詳         13       +18.2%     1%      2%
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平成30年の北海道の自殺者数は、前年に比べ0.3%減少しました。あまり大きな変化はあり
ませんでしたが、内訳をみると、「自営業・家族従事者」(+9.6%)、「被雇用者・勤め
人」(+8.7%)、「失業者」(+45.5%)、「不詳」(+18.2%)において増加、逆に「学生
・生徒等」(-16.7%)、「主婦」(-23.6%)、「年金・保険等生活者」(-8.8%)、「そ
の他無職者」(-5.4%)において減少でした。
北海道における自殺者の職業内訳の構成比を見ると、「被雇用人・勤め人」(34%)が最
も多く、ついで「年金・保険等生活者」(24%)、「その他無職者」(21%)と続きます。
北海道は、全国と比較してみると「被雇用者・勤め人」の占める割合が若干大きくなって
います。

参考文献
「平成30年中における自殺の状況」、2019、厚生労働省・援護局総務課自殺対策推進室 
警察庁生活安全局生活安全企画課

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【2】自殺について知ろう

◇若者の自殺対策 SNSの利用◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
Andante vol.112の“自殺について知ろう”では、「座間市における事件の再発防止策の
実施状況について」をご紹介させていただきました。その中で、「1. SNS等における自殺
に関する不適切な書き込みへの対策」、「2. インターネットを通じて自殺願望を発信す
る若者の心のケアに関する対策」、「3. インターネット上の有害環境から若者を守るた
めの対策」という主に事件の再発防止のための対策についてふれさせていただきました。
今回は、『平成30年版自殺対策白書』を基に、“若者を支援するためのツール”としての
SNSについてまとめてみたいと思います。

自殺総合対策大綱では、「第四 自殺総合対策における当面の重点施策−7. 社会全体の
自殺リスクを低下させる」の中にICT(インターネットやSNS等)の活用が挙げられていま
す。昨年の座間市における事件の防止や大綱の挙げられている方針に基づき厚生労働省で
は、若者が日常的なコミュニケーション手段として利用するSNSを通じて相談・支援を受
けられるよう、広く若者一般を主な対象とするSNSを活用した相談事業を、平成30年3月の
自殺対策強化月間に合わせて集中的に実施しています。全13団体によってSNS(LINE、Twi
tter、チャット)による相談が行われました。
その結果、LINEで10,017件、チャットで87件、Twitterで25件、延べ10,129件、相談者実
数3,462人への相談が行われました。男女別では、総数10,129件中性別不詳を除くと、男
性950件、女性6,873件となっており、女性が全体の87.9%を占めています。相談内容別の
状況についてみると総数11,818件中、「メンタル不調」(2,357件)が最も多く、次いで
「家族」(1,187件)、「学校」(999件)となっています。男女別にみると、男女ともに
「メンタル不調」(男性:268件、女性:2,010件)が最も多く、男性は次いで「勤務」(
169件)、「学校」(139件)、女性は「家族」(1,029件)、「学校」(816件)と多くな
っています。
実施した団体によると、若者を含め、対面やコミュニケーションが苦手な人を相談につな
げられた、家族に聞かれたくない話がしやすいなど、SNS相談のニーズは確実に存在する
こと担った一方で、SNS相談には、相手の反応が見えない、途中で反応が途絶えることも
あるなど、難しさがあることもわかってきたとまとめられています。
参加団体の一つ、NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表清水氏は、「今回の相
談事業を通じて、SNSを活用した自殺相談は非常に有効であるとの確信を得た。特に、若
年世代や勤労者、聴覚障害者や発達障害などで人とコミュニケーションを取るのが苦手な
人など、普段なかなか相談機関につながりにくい人たちにとって、SNSが相談への「補助
階段」として機能し得ると実感した。(中略)今後は、SNS相談を日本社会における相談
インフラの重要な柱のひとつとして育てていく必要があるが、そのためには「SNS自殺相
談対応ガイドラインの作成」や「相談の担い手の育成」を行っていかなければならない。
また同時に、私たちは、若者たちが生きる日本社会の環境そのものを改善することの重要
性を忘れてはならない。実生活の中で、若者たちが居場所や役割を実感できる機会や、安
心して相談できる受け皿も、もっと増やしていかなければならない」と述べています。

6月15日の共同通信によると、「厚生労働省が自殺対策として実施している会員制交流サ
イト(SNS)の相談事業で、2018年度の相談件数が延べ22,725件であった」と報道されて
いました。詳しい内容については近く閣議決定される2019年版自殺対策白書に盛り込まれ
るとされています。まだ詳細についてはわかりませんが、今回取り上げた前年のデータと
比べると2倍近い数字となっています。これは悩みを抱えている人が増えたというより、S
NS相談が少しずつ認知され、潜在的なニーズとつながったということなのではないでしょ
うか。
家庭や学校、人間関係など悩み多き若者にとって、自分の心情を素直に表に出すことはま
だまだ敷居が高く、簡単ではないのかもしれません。それを促せるSNSが適切な相談機関
へとつながる玄関口になってくれることを期待したいと思います。

参考文献
『平成30年版 自殺対策白書』、2018、厚生労働省
『Q&A自殺対策計画策定ハンドブック』、2018、本橋豊編著、株式会社ぎょうせい発行

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【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
月曜から金曜日                        9:00〜21:00
土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)       10:00〜16:00
Tel:0570-064-556
※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して
おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。
パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察
から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら
も併せてご覧ください。
携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

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【4】編集後記

先月の5月末に、川崎市で被害者が20人にも及ぶ殺傷事件がありました。これは事件後、
犯人が自殺したため一種の拡大自殺としても考えられているようです。この事件に対して
「死ぬなら一人で死ね」という意見がSNSやマスコミで相次ぎ、その言葉の是非について
論争となる事態に発展しました。理想論だとは思いますが、加害者が加害者になる前に援
助できるような体制作りを願います。

いつもご愛読ありがとうございます。
次号Vol.121は、令和元年(2019年)7月末に配信予定です。

                                                        *お問い合わせ先* 
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                                                              Tel 011-864-7121
                                                              Fax 011-864-9546
                                    URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                                    Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp