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[北海道]                                 R2.11.30
・゚・*:.。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。...:゚・*:.。  Vol.137
              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
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※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています。
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− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 令和2年10月末の自殺者数(暫定値)[警察庁]
◇ 令和元年の自殺者数(確定値)[人口動態統計]
【2】 自殺について知ろう
◇ コロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP・携帯版HPをご覧ください
【4】 編集後記
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【1】北海道における自殺の現状

◇令和2年10月末の自殺者数(暫定値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 警察庁より令和2年10月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。
令和2年10月の北海道の自殺者数は91人でした。また、全国の自殺者数は2,158人、そのう
ち男性は1,306人、女性は852人でした。
 以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1. 令和2年10月末と令和2年9月末の月別自殺者数の比較
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令和2年10月<北海道 91人、全国 2,158人、全国(男性) 1,306人、全国(女性) 852人>
令和2年9月 <北海道 89人、全国 1,849人、全国(男性) 1,201人、全国(女性) 648人>
前 月 比 <北海道 +2人、全国 +309人、全国(男性) +105人、全国(女性) +204人>
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 令和2年10月の自殺者数は、前月比では、北海道、全国、全国(男性)、全国(女性)
の全てにおいて増加でした。都道府県別では、自殺者数が増加したのは29、減少したのは
17、変化なしは1でした。

2. 令和2年10月末と令和元年10月末の月別自殺者数の比較
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
令和 2年10月<北海道 91人、全国 2,158人、全国(男性)1,306人、全国(女性)852人>
令和元年10月<北海道 63人、全国 1,539人、全国(男性)1,073人、全国(女性)466人>
前 年 比 <北海道 +28人、全国 +619人、全国(男性)+233人、全国(女性)+386人>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 前年同月比では、北海道、全国、全国(男性)、全国(女性)の全てにおいて増加でし
た。また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは40、減少したのは6、増減なし
は1でした。

◇令和元年の自殺者数(確定値)[人口動態統計]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 日本で主に使用される自殺についての統計は大きく2つあります。一つは警察庁公表の
「自殺統計」、そしてもう一つは厚生労働省が公表している「人口動態統計」です。この
2つの統計は、“日本における外国人の取扱いの差異”、“調査時点の差異”、“計上地
点の差異”があるため計上される自殺者数に差があります。今回は令和2年9月17日に更新
された厚生労働省「人口動態統計」から令和元年中の自殺者数についてまとめていきたい
と思います。

1. 令和元年全国及び北海道の自殺者数の前年比 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        北海道   北海道(男性)  北海道(女性)   全国
令和元年     884      618       266      19,425
平成30年     905      626       279      20,031
前年比      -21      -8        -13       -606
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 令和元年の北海道の自殺者数は884人で前年に比べ21人の減少、人口10万人対の自殺死
亡率は17.0人でした。そのうち男性の自殺者数は618人で前年比8人の減少、女性の自殺者
数は266人で前年比13人の減少でした。
 全国の自殺者数は19,425人で前年比606人の減少、人口10万人対の自殺死亡率は15.7人
でした。

2. 令和元年北海道における月別自殺者数の前年比 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         1月    2月    3月    4月    5月    6月
令和元年     73     80    78     75    89     66
平成30年     67     68    91     75    79     86
前年比      +6    +12    -13    ±0    +10    -20
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         7月    8月    9月    10月   11月   12月
令和元年     67     81    81     63    69    62
平成30年     79     74    64     85    71    66
前年比      -12    +7    +17    -22    -2    -4
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 令和元年に北海道で最も自殺者の少なかった月は12月の62人でした。逆に最も多かった
月は5月の89人でした。前年比において最も自殺者が減少したのは10月の22人、逆に最も
増加したのは9月の17人でした。

3. 厚生労働省「人口動態統計」と警察庁「自殺統計」との差(単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         北海道   北海道(男性)   北海道(女性)   全国
人口動態統計    884      618        266      19,425
自殺統計      971      678        293      20,169
差         87       60        27       744
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 令和元年の厚生労働省「人口動態統計」と警察庁「自殺統計」の自殺者数の差は、全国
では744人、北海道では87人(男性:60人、女性:27人)となっています。いずれも警察
庁「自殺統計」の方が多く計上されていますが、この傾向は例年通りです。

参考文献
 厚生労働省、「人口動態統計」、2020
 厚生労働省自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課、「令和元年中における
自殺の状況」、2020

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【2】自殺について知ろう

◇コロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 新型コロナ禍での自殺が増加傾向にあることを受け、厚生労働省の指定法人「いのち支
える自殺対策推進センター」は10月21日、「コロナ禍における自殺の動向に関する分析(
緊急レポート)」を公表しました。今回は本資料の中から下記の主なポイント1〜3を一部
抜粋、加工してご紹介したいと思います。主なポイント4〜7の詳細については、内容的に
一歩踏み込んだものとなっているため、今回は省かせていただきます。本資料は図表も多
く使用されていますので、詳細な内容について興味のある方は是非原本の方も合わせて御
一読ください。

〇 本資料の主なポイント
1.本年の自殺の動向は、例年とは明らかに異なっている。
2.本年4 月から6 月の自殺者数は、例年よりも減少している。
3.様々な年代において、女性の自殺は増加傾向にある。
4.自殺報道の影響と考えられる自殺の増加がみられる。
5.本年8 月に、女子高校生の自殺者数が増加している。
6.自殺者数は、依然として女性よりも男性が多い。
7.政府の各種支援策が自殺の増加を抑制している可能性がある。

〇 分析に使用されたデータ
  警察庁「自殺統計」
  雇用や生活を支えるための政策に関するデータ
  SNSやネット検索に関するデータ
  自殺に関する相談として寄せられた声(2020年3月以降)

〇 分析における主なポイント
1.本年の自殺の動向は、例年とは明らかに異なっている。
 自殺者数の長期トレンド(2014 年以降)を、統計的な方法で、7 日間の移動平均をと
るようにして分析したところ、長らく減少を続けていた自殺者数が2020 年に入ったあた
りから上昇に転じていた。男女別では、女性の自殺者数の上昇が顕著であった。
 2015〜2019年の回帰モデルに基づく予測値と実測値との差をみると、4月から5月までは
実測値が予測値を下回る傾向にあり、7 月中旬以降は逆に予測値を上回る傾向にある。

2.本年4月から6月の自殺者数は、例年よりも減少している。
 警察庁の自殺統計によれば、本年の月別自殺者数は6月までは前年比でいずれの月も減
少しており、とりわけ4月と5月の自殺者数は、それぞれ対前年比で17.7%と15.3%と大
幅に減少している。
 2015〜2019 年の回帰モデルに基づく予測値と実測値との差をみても、4月に入ってか
らはほとんどの日において2020年の自殺者数の予測値を下回っている。
 社会的危機の最中あるいは直後には人々の死への恐怖や社会的連帯感・帰属感の高まり
により、自殺者数は減少することが多くの研究で報告されており、本年4月から6月にか
けても、同様のことが起きた可能性がある。Google Trends で調べた「コロナ」という用
語の検索数は、東京都の小池都知事による「ロックダウン発言(3月23日)」前後から
増加し始めて、3月30日に著名コメディアンが新型コロナウイルス感染症により急逝し
たことが報道された直後(実際に亡くなったのは3月29日)にピークを迎えている。自
殺者数(日次)は、そうした中で減少している。
 ツイッターのつぶやきに関する分析においても、「コロナ」と「仕事を失う恐れ」「収
入減少」「生活苦」に関するツイートは2月下旬に増え始めたが、4月上旬以降は漸減し
ていた。具体的には、「WHO が世界的に緊急事態を宣言した1月30日」と「安倍総理(
当時)が全国臨時休校の要請を行った2月27日」に増加し、やはり「著名コメディアン
が新型コロナウイルスにより急逝したことが報道された3月30日」に急増していた。
 一方、4月以降、「緊急小口資金」と「総合支援資金」の貸付件数は増加しており、加
えて「特別定額給付金」の社会的アナウンス効果が生活不安を緩和させた可能性も恐らく
あって、そうした資金の貸付件数とツイートの件数には負の相関関係がみられる。このこ
とから、政府が打ち出した各種支援策により、生活等への不安が少なくとも一時的には、
ある程度払拭された可能性がある。
 これらのことから、新型コロナウイルス感染症による死への恐怖によって人々が自身の
命を守ろうとする意識が高まり、同時に、自身の命や暮らしを守るための具体的な施策に
アクセスできるようになったことにより、4月から6月にかけては例年よりも自殺者数が
減少した可能性がある。
 なお、これは自殺に関する相談として寄せられた声に関する考察だが、3月下旬頃から
自殺念慮を抱えた人たちから「今までは、生きるのが大変なのは自分だけだと思っていた
が社会全体が自分と同じような状況になってホッとした」「みんなが自分と同じようなつ
らい経験をしているのをみて、気持ちが楽になった」といった声が聞かれるようになった
。自殺のリスクを抱えた人たちが、そうした思いになったことで、この期間中には自殺行
動に至らなかった可能性(結果として自殺者数が減少した可能性)も考えられる。

3.様々な年代において、女性の自殺は増加傾向にある。
 7月以降は特に女性の自殺の増加が目立つ。男女全体の自殺死亡率をみると、「20歳未
満」「20〜39歳」「40〜59歳」「60歳以上」のすべての年齢階級における女性の自殺
が押し上げていることが分かる。
 また、さらに細かく、「性別×同居人の有無」と「性別×職の有無」について分析した
ところ、7月において「同居人がいる女性」は男女全体の自殺死亡率を0.7上昇させ、「
無職の女性」は0.6上昇させていることが分かった。8月においては「同居人の有無」や
「職の有無」が「不詳」となっている部分が多いが、それでも7 月同様に、「同居人がい
る女性」と「無職の女性」が、男女全体の自殺死亡率を上昇させている。自殺に関する相
談として、配偶者と暮らす女性から「コロナでパートの仕事がなくなり、夫からは怠ける
なと毎日怒鳴られる。こんな生活がずっと続くなら、もう消えてしまいたい」といった相
談や、シングルマザーの母親から「子どもが発達障害で子育てがとても大変なのに、ステ
イホームでママ友とも会えず、実家にも帰れない。子どもの検診もなくなって、ひとりで
どうやって子育てをしていけばいいのか分からない。死んで楽になりたい」といったよう
な相談が多く寄せられている。
 女性の自殺の背景には、経済生活問題や勤務問題、DV(ドメスティックバイオレンス)
被害や育児の悩み、介護疲れや精神疾患など、様々な問題が潜んでいる。コロナ禍におい
て、そうした、自殺の要因になりかねない問題が深刻化しており、これらが女性の自殺者
数の増加に影響を与えている可能性がある。
 また、内閣府によれば政府や自治体の相談窓口に寄せられたDV の相談件数の合計は本
年5月と6月において前年同月比でそれぞれ約1.6倍に増えたことが分かっているという。
さらに、筑波大学の研究者の調査で、出産後の母親の「産後うつ」が新型コロナウイルス
感染症の影響で以前の2倍以上に増えているとの報告があるなど、コロナ禍で、人と接す
る機会や場が少なくなり、経済的にも不安定な生活を強いられる女性が増えている中で、
今後女性の自殺リスクがさらに高まっていくことが懸念される。

参考文献
 厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センター、「コロナ禍における自殺の
動向に関する分析(緊急レポート)」、2020、https://3112052d-38f7-4601-af43-2555a2
470f1f.filesusr.com/ugd/0c32a8_91d15d66d1bf41a69a1f41e8064f4b2b.pdf

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【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
 月曜から金曜日                        9:00〜21:00
 土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)          10:00〜16:00
 Tel:0570-064-556
 ※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
 北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載し
ており、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。また、An
danteのバックナンバーへのリンクもございますので是非ご覧ください。
 パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

 また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警
察から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こち
らも併せてご覧ください。
 携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

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【4】編集後記

 北海道ではついに雪が降り始め、いよいよ本格的な冬期期間となってきました。まだ根
雪にはなっていませんが、いつ移動の生命線である自転車が使えなくなるか心配です。
 自殺に関する話題としては、10月27日に「令和元年版自殺対策白書」が閣議決定されま
した。現在は、厚生労働省の自殺対策のホームページで公開されていますので、興味のあ
る方は是非御一読ください。詳しい内容については、今後、Andanteの方でも取り挙げさ
せてもらう予定ですので、楽しみにお待ち下さい。

 いつもご愛読ありがとうございます。
 次号Vol.138は、令和2年12月末に配信予定です。

                                                        *お問い合わせ先* 
                                               北海道立精神保健福祉センター
                  札幌市白石区本通16丁目北6番34号
                          Tel 011-864-7121
                          Fax 011-864-9546
                  URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
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