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[北海道]                                 R3.1.31
・゚・*:.。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。...:゚・*:.。  Vol.139
              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
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※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています。
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− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 令和2年12月末の自殺者数(速報値)[警察庁]
◇ 警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等(令和2年速報値)[警察庁]
【2】 自殺について知ろう
◇ 中高年層における自殺をめぐる状況[令和2年版自殺対策白書]
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP・携帯版HPをご覧ください
【4】 編集後記
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【1】北海道における自殺の現状

◇令和2年12月末の自殺者数(速報値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 警察庁より令和2年12月末の月別自殺者数の速報値が発表されました。
 令和2年12月の北海道の自殺者数は68人でした。また、全国の自殺者数は1,694人、その
うち男性は1,102人、女性は592人でした。
 以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1. 令和2年12月末と令和2年11月末の月別自殺者数の比較
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令和2年12月<北海道 68人、全国1,694人、全国(男性)1,102人、全国(女性) 592人>
令和2年11月<北海道 78人、全国1,835人、全国(男性)1,194人、全国(女性) 641人>
前 月 比<北海道 -10人、全国 -141人、全国(男性) -92人、全国(女性) -49人>
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 令和2年12月の自殺者数は、前月比では、北海道、全国、全国(男性)、全国(女性)
において減少でした。都道府県別では、自殺者数が増加したのは16、減少したのは28、変
化なしは3でした。

2. 令和2年12月末と令和元年12月末の月別自殺者数の比較
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
令和2年12月<北海道 68人、全国1,694人、全国(男性)1,102人、全国(女性) 592人>
令和元年12月<北海道 67人、全国1,494人、全国(男性)1,035人、全国(女性) 459人>
前 年 比 <北海道 +1人、全国+200人、全国(男性) +67人、全国(女性) +133人>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 前年同月比では、北海道、全国、全国(男性)、全国(女性)において増加でした。ま
た、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは32、減少したのは15、増減なしは0で
した。

◇警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等(令和2年速報値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇
 令和3年1月22日、「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」にて、令和2年中の
自殺者数速報値集計が公表されました。その中から、今回は全国及び北海道の令和2年中
の自殺者数について概観したいと思います。後日確定値が出ましたら、あらためてご報告
します。

1. 令和2年と令和元年の北海道と全国の年間自殺者数         (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           北海道   全国   全国(男性)   全国(女性)
令和2年(速報値)   926   20,919    13,943      6,976
令和元年(確定値)   971   20,169    14,078      6,091
前 年 比       -45    +750     -135      +885
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 令和2年中の自殺者数は、前年に比べ、全国、全国(女性)において増加、北海道、全
国(男性)において減少しました。都道府県別でみると、増加は29、減少は17、増減なし
は1でした。

2.令和2年と令和元年の全国における月別自殺者数          (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           1月   2月   3月   4月   5月   6月
令和2年(速報値) 1,680  1,454  1,751  1,504  1,585  1,570
令和元年(確定値) 1,684  1,615  1,856  1,814  1,853  1,640
前 年 比      -4   -161  -105   -310  -268   -70
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           7月   8月   9月   10月   11月   12月
令和2年(速報値) 1,858  1,917  1,872   2,199  1,835   1,694
令和元年(確定値) 1,793  1,603  1,662   1,539  1,616   1,494
前 年 比      +65  +314   +210   +660   +219   +200
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 令和2年の全国で自殺者数が最も多かったのは10月の2,199人でした。逆に、最も少なか
ったのは2月の1,454人でした。
 また、前年よりも自殺者数が増加した月は7月〜12月、減少した月は1月〜6月でした。

参考文献
 「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」、2021、厚生労働省自殺対策推進室

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【2】自殺について知ろう

◇中高年層における自殺をめぐる状況[令和2年版自殺対策白書]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 令和2年12月、『令和2年版自殺対策白書』が厚生労働省から発行されました。本書は全
3章で、「第1章 自殺の現状」、「第2章 自殺対策の基本的な枠組みと中高年、高齢者
の自殺をめぐる状況」、「第3章 令和元年度の自殺対策の実施状況」となっています。
今回は、「第2章 自殺対策の基本的な枠組みと中高年、高齢者の自殺をめぐる状況」の
中の「第二節 中高年層における自殺をめぐる状況」についてご紹介したいと思います。
紙面の都合上、一部修正、抜粋する形となりますので、より詳細な内容については本書の
方をご参照下さい。

1. 中高年における自殺者数及び自殺死亡率について
 平成21年以降の中高年の自殺者数の推移をみると、21年の14,985人をピークに減少を続
け、令和元年は8,206人となっています。この間6,779人(45.2%)の減少となりました。
全体の自殺者数も同様の傾向であり、平成21年の32,768人から令和元年の19,974人へと、
12,794人(39.0%)の減少となり、中高年が減少の半数(53.0%)を占めていました。
 平成21年以降の中高年の自殺死亡率(人口10万人当たり自殺者数)の推移をみると、21
年の35.1から令和元年は15.7ポイント低下の19.4となっています。全体の自殺死亡率も同
様の傾向であり、平成21年の25.6から令和元年は9.8ポイント低下の15.8となりました。
平成21年の中高年の自殺死亡率は全体の自殺死亡率と比べ9.5ポイント高くなっていま
したが、令和元年ではその差は3.6ポイントまで小さくなり、中高年において自殺死亡率
の改善の大きいことがわかります。

                        (単位:人、( )内自殺死亡率)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      平成21年     平成22年     平成23年     平成24年
全体   32,768(25.6)  31,581(24.7)  30,608(23.9)  27,809(21.8)
中高年  14,985(35.1)  14,378(33.1)  13,610(31.0)  12,009(27.6)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      平成25年     平成26年     平成27年     平成28年
全体   27,215(21.4)  25,418(20.0)  23,964(18.9)  21,870(17.2)
中高年  11,468(26.5)  10,511(24.5)  9,898(23.1)   9,024(21.2)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      平成29年     平成30年     令和元年
全体   21,286(16.8)  20,820(16.5)  19,974(15.8)
中高年  8,726(20.5)   8,480(19.8)  8,206(19.4)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2. 中高年における自殺の原因・動機について
 平成21年以降の中高年の原因・動機の推移をみると、経済・生活問題は、自殺者数の減
少に比して、急激な減少を見せており、令和元年は平成21年の約3分の1程度となっていま
す。次いで、健康問題も、令和元年は平成21年より約4割減少しています。一方、これら
以外の原因・動機は、減少傾向にはあるものの、経済・生活問題や健康問題と比べて減少
幅は大きくなく、また、ここ数年は、家庭問題は1,000人台前半、勤務問題は1,000〜
1,100人、その他は300人台後半、男女問題は200人台前半で、横ばいで推移しています。
原因・動機について小分類で見ると、中高年男性全体では、第1位が「病気の悩み・影響
(うつ病)」、第2位が「病気の悩み(身体の病気)」、第3位が「生活苦」、第4位が「
負債(多重債務)」、第5位が「負債(その他)」となり、健康問題が上位を占めていま
す。項目数では、上位10位のうち、経済・生活問題が6項目、健康問題が3項目、家庭問題
が1項目となり、経済・生活問題の多いことが男性の特徴といえます。中高年女性全体で
は、第1位が「病気の悩み・影響(うつ病)」、第2位が「病気の悩み(身体の病気)」、
第3位が「病気の悩み(統合失調症)」、第4位が「病気の悩み(その他の精神疾患)」、
第5位が「夫婦関係の不和」となり、健康問題が上位を占めていますが、項目数では上位
10位のうち、家庭問題が5項目、健康問題が4項目、経済・生活問題が1項目となり、家庭
問
題の多いことが女性の特徴となっています。

                                  (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
家庭問題      1,854  2,027   2,097  1,835   1,705  1,561
健康問題      6,401  6,506   6,093  5,516   5,416  5,137
経済・生活問題   5,689  4,974   4,189  3,337   2,836  2,458
勤務問題      1,321  1,407   1,354  1,258   1,224  1,169
男女問題       291   297    328   309    242   255
学校問題        1    0     3    5     0    1
その他        596   626    598   547    535   467
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年
家庭問題      1,531   1,440  1,408  1,343   1,315
健康問題      4,790   4,297  4,214  4,077   3,736
経済・生活問題   2,355   2,069  1,961  1,977   1,942
勤務問題      1,075   1,037  1,066  1,071   1,060
男女問題       234    222   256   220    226
学校問題        1     0    2    0     1
その他        469    388   392   341    373
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 本書によると、10代を除く全ての年齢階級で自殺者数が減少する状況にあり、20代及び
30代については自殺者が急増した平成10年より前の水準に戻った状況に対し、40代以上の
年齢階級については急増した平成10年より前の水準を下回る水準まで減少しており、近年
の自殺者の大幅な減少に寄与しているとされています。また、中高年に関する分析のまと
め、今後の取組として以下のように述べられています。
 「中高年については、経済・生活問題による自殺が多いことから、経営者に対する経営
相談、融資、雇用維持のための助成、失業者に対する就職支援、多重債務の相談やセーフ
ティネット融資、生活困窮者に対する支援、法的問題のための相談等の各種支援策を引き
続き充実させていくとともに、支援を必要としている人にこうした支援策の情報が届くよ
う情報発信をしていくことが必要である。特に、令和2年に入り、新型コロナウイルス感
染症の拡大により、学校の休校、緊急事態宣言による活動自粛要請が行われ、収入の減少
、事業不振、雇用不安等の影響があったところであり、政府においては、数次にわたる緊
急対応策や補正予算により、事業者に対する融資、雇用維持の支援、緊急小口融資等の支
援策を講じてきた。また、支援を必要とする人にこれらの支援策の情報が届くよう、「支
援情報ナビ」等により情報発信を行ってきた。新型コロナウイルス感染症拡大の第2派、
第3派とそれによる経済への影響の可能性があるが、こうした取組を着実に進めていくこ
とが必要である。また、中高年については勤務問題を原因・動機とするものも多いことか
ら、長時間労働の是正、職場のメンタルヘルス対策、ハラスメント対策を一層推進してい
くことが重要である。前期高齢者についても継続雇用制度の整備等により被雇用者・勤め
人が増えており、同様の対策が重要である。中高年の女性については子育ての悩みや介護
・看護疲れによる自殺も多いが、家事や育児の負担が女性に偏っている状況が影響してい
ることが考えられる。育児や家族介護に対する支援策を一層推進していくとともに、男性
の育児・家事参加を進めていくことが重要である。」

 今号は、「第2章 自殺対策の基本的な枠組みと中高年、高齢者の自殺をめぐる状況」
の中の「第二節 中高年層における自殺をめぐる状況」についてご紹介しました。次号は
「第三節 前期高齢者層における自殺をめぐる状況」についてご紹介したいと思います。
興味のある方は是非楽しみにお待ち下さい。

参考文献
 厚生労働省、『令和2年版 自殺対策白書』、2020

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【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
 月曜から金曜日                        9:00〜21:00
 土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)          10:00〜16:00
 Tel:0570-064-556
 ※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
 北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載し
ており、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。また、An
danteのバックナンバーへのリンクもございますので是非ご覧ください。
 パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

 また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警
察から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こち
らも併せてご覧ください。
 携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

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【4】編集後記

 新年明けましておめでとうございます。
 今年も皆様にとって有益な情報をお届けできるよう努力してきたいと思います。
 昨年の全国の自殺者数は、警察庁「自殺統計」の速報値によると、平成21年以来の前年
比増加という形となりました。その理由は女性の自殺者数の増加となっています。
 新型コロナウイルスとの関係は明確にされていませんが、関連付けて考えている意見を
見ますと、非正規職員の雇い止めやステイホームによる心身への負担、これがより女性へ
の影響が大きかったのではないかと言われています。北海道については前年比減少となり
ましたが、上半期の減少が大きく、下半期に限定してみると全国同様増加となっており、
注意が必要です。
 不安や疲れによるストレス状態が長く続くと、体や考え方に影響が出ることは多くの方
に起こる正常な反応です。その時は、大事に至る前に、然るべき相談機関や電話相談など
を頼って頂きたいと思います。

 いつもご愛読ありがとうございます。
 次号Vol.140は、令和3年2月末に配信予定です。

                                                        *お問い合わせ先* 
                                               北海道立精神保健福祉センター
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                          Tel 011-864-7121
                          Fax 011-864-9546
                  URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                  Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp