===============================================================================
[北海道]                                H28.11.30
・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。 Vol.089

              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
 ===============================================================================



********************************************************************************


※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。皆さんは最近、ゆっくり
と歩いてみたことはありますか?ゆっくりと自分にとって適度なスピードで歩いてい
るとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす中では見過ごしがちな
ものに気が付くことがあります。月に一度「Andante」が届くたびに、皆さんがふっと
一息つき、少しの時間だけでもゆっくり歩くことを思い出していただけたらと考えて
います。
--------------------------------------------------------------------------------
− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 平成28年10月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]
◇ 平成21〜27年北海道における勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者数の推移(確
定値)[内閣府発見日・住居地データ]
【2】 自殺について知ろう
◇ 「平成28年版過労死等防止対策白書」より過労自殺に関して
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP及び携帯HPをご覧ください
【4】 編集後記
--------------------------------------------------------------------------------

********************************************************************************
【1】北海道における自殺の現状

◇平成28年10月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

警察庁より平成28年10月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。
平成28年10月の北海道の自殺者数は86人でした。また、全国の自殺者数は1,781人、その
うち男性は1,243人、女性は538人でした。
以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1.平成28年10月末と平成28年9月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
H28年10月<北海道 86人、全国1,781人、全国(男性)1,243人、全国(女性) 538人>
H28年9月 <北海道 91人、全国1,752人、全国(男性)1,198人、全国(女性) 554人>
前  月  比 <北海道 -5人、全国 +29人、 全国(男性) +45 人、全国(女性)-16人>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

平成28年10月の自殺者数は、前月比では北海道と全国女性は減少しましたが、全国と全国
男性は増加しました。
都道府県別では、自殺者数が増加したのは25、減少したのは21、変化なしは1でした。

2. 平成28年10月末と平成27年10月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
H28年10月<北海道 86人、全国 1,781人、全国(男性) 1,243人、全国(女性)538人>
H27年10月<北海道 99人、全国 2,017人、全国(男性) 1,417人、全国(女性)600人>
前 年 比<北海道 -13人、全国 -236人、 全国(男性) -174人、全国(女性)-62人>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

前年同月比では、北海道・全国・全国男性・全国女性のすべてにおいて減少しました。
また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは13、減少したのは31、増減なしは3
でした。

◇平成21〜27年北海道における勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者数の推移(確定
値)[内閣府発見日・住居地データ]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

今月11月は「過労死等防止対策推進法」に基づく「過労死等防止啓発月間」でした。過労
死等を防止することの重要性について国民に自覚を促し、関心と理解を深めるため、全国
各地でシンポジウムやキャンペーンが行われました。また、10月7日には、厚生労働省か
ら平成28年版「過労死等防止対策白書」が公表されました。その中で、過労死に関連する
自殺の状況として、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の推移が分析されています
。「勤務問題」としてカウントされる内容は、「仕事の失敗」「職場の人間関係」「職場
環境の変化」「仕事疲れ」「その他」であり、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺が
すべて過労自殺という訳ではありませんが、全国データでは、過労とほぼ同義と考えられ
る「仕事疲れ」は勤務問題の中で最も多く、3割を占めます。2番目に多いのは「職場の人
間関係」で、2割を占めます。
そこで、これに関連して、北海道における勤務問題を原因・動機の1つとした自殺者数の
推移を見てみようと思います。残念ながら、都道府県別データでは、勤務問題をさらに詳
細に分類したデータは公表されていませんので、北海道の勤務問題の数値を全国や労災認
定のデータと照らし合わせることで、北海道の勤務問題に関わる自殺について考えてみよ
うと思います。なお、ここでは「過労死等防止対策白書」の全国データに合わせて、発見
日・住居地データの確定値を用います。

最初に、平成21年から平成27年までの北海道における勤務問題を原因・動機の1つとする
自殺者数と全自殺者数に占める割合です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           H21   H22   H23   H24   H25   H26   H27
北海道の
勤務問題件数  142   147    152   131   132   112   117
北海道の
自殺全件数    1577  1509   1409  1275  1225   1140  1110
北海道の
勤務問題の割合 9.0%   9.7%   10.8%  10.3%  10.8%  9.8%  10.5%
全国の
勤務問題の割合 7.7%   8.2%   8.8%   8.9%   8.5%  8.8%   9.0%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
北海道の勤務問題を原因・動機の1つとする自殺件数は減少傾向が見られますが、全自殺
に占める割合は微増していると見られ、全国の勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者
の割合と比較して、高めで推移しているようです。このことが、北海道の職場の状況の厳
しさを表しているのかどうか、気になります。

次に、平成21年から平成27年までの北海道における勤務問題を原因・動機の1つとする自
殺者数と、北海道の精神障害に係る労災請求件数および支給決定数のうちの自殺(未遂を
含む)の数を比較してみます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                H21  H22  H23  H24  H25  H26  H27
北海道の勤務問題件数 142  147  152   131  132  112  117
自殺に係る労災請求数  4   12   13    3    8   12   9
自殺に係る支給決定数  3    2    5    5    0    2   5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
精神障害に係る自殺の労災請求件数は非常に少なく、そのうち労災による補償の支給決定
を受ける数はさらにごく限られた数であることがわかります。平成21年から平成27年まで
の北海道における精神障害による自殺の労災請求数は計61件、このうち労災による補償の
支給が決定した件数は計22件ですから、3分の1ほどです。労災認定のハードルは高そうで
す。過労で自殺に追い込まれることのない社会でありたいものです。

参考資料:厚生労働省 平成21年〜平成27年「過労死等の労災補償状況」別添資料


********************************************************************************
【2】自殺について知ろう

◇「平成28年版過労死等防止対策白書」」より過労自殺に関して◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
先月、過労死等の現状や過労死等防止対策推進法の制定の経緯、過労死等の防止のための
対策に関する大綱の策定、過労死等の防止のための対策の実施状況をまとめた「過労死等
防止対策白書」が厚生労働省より公表されました。また、今月は「過労死等防止啓発月間
」です。Andante vol.86で「過労死等の労災補償状況」についてお伝えしたばかりなので
、少し重複する部分もありますが、今回の「自殺について知ろう」では、「過労死等防止
対策白書」を取り上げ、その中の自殺に関する部分をご紹介します。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
原因・動機別(遺書等の自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因・動機を自殺
者一人につき3つまで計上可能としたもの)にみると、勤務問題が原因・動機の一つと推
定される自殺者数は、平成19年から平成23年にかけて、自殺者総数が横ばいから減少傾向
にある中で増加しましたが(平成23年は2,689人)、その後減少し、平成27年は2,159人と
なっています(勤務問題による自殺がすべて過労死というわけではないことは先述の通り
です)。
勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を職業別にみると、「被雇用者
・勤め人」が8割以上を占め、次いで、「自営業者・家族従事者」、「その他の無職者」
となっています。また、年齢層別にみると、概ね、40〜49歳、30〜39歳、20〜29歳、50〜
59歳の順に多くなっています。
業務における強い心理的負荷により精神障害を発病したとする労災請求件数は、統計の載
っている平成11年度以後ほぼ単純に増加してきており、平成11年度は155件でしたが、平
成27年度にはその約10倍の1,515件となっています。支給決定件数も増加しておきており
、平成22年度に300件を超え、平成24年度以降は400件台で推移し、平成27年度は472件と
なっています。そのうち、自殺の件数(未遂を含む。以下同)は93件となっています。
平成27年度の支給決定件数のうち、自殺93件の男女別内訳は、男性88人、女性5人と、圧
倒的に男性の方が多くなっています。年齢別の内訳は、最も多いのが40歳代の34人、次い
で30歳代の22人、50歳代の21人、20歳代の14人、60歳以上の2人となっています。働き盛
りの世代の負担が過重であることがうかがえます。
過労死ラインとされている1ヶ月の時間外労働時間平均80時間という数字の影響を脳・心
臓疾患による死亡について見てみると、80時間未満で支給決定された死亡が5件であるの
に対し、80時間以上は89件となっており、明白な影響が見られます。特に、60時間から80
時間における死亡数と80時間から100時間における死亡数を比較すると、平成26年は10件
から50件へ、平成27年は4件から49件へと、急激に増え、80時間から100時間に大きな一山
があります。
精神障害による自殺と労働時間の長さの関係を見ますと、労働時間数全体に散らばってい
る印象ではありますが、その中でも100時間から120時間に一山、そして160時間以上にも
もう一山あるようです。やはり労働時間が長くなるほど自殺の件数も増えるのは明らかと
言えます。
支給決定を受けた自殺者の就労形態別内訳を見ますと、93人中87人が正規職員・従業員と
なっています。また、出来事別内訳を見ますと、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を
生じさせる出来事があった」が26件、心理的負荷が極度のものなど「特別な出来事」が17
件、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が8件、「1ヶ月に80時間以上の
時間外労働を行った」が7件、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」が5件などとな
っています。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「24時間、戦えますか」のキャッチコピーとCMソングが流行したドリンク剤が発売開始に
なったのは、1988年のことでした。バブル景気で日本人が働きに働いていた時期ですが、
その年に弁護士や医師などの協同で初めて「過労死110番」が全国7カ所に開設されていま
す。そのように過労死が大きな社会問題になってからすでに30年近く経過しており、過労
死が「karoshi」という英語の一般名詞としてOxford辞書に掲載された2002年からもすで
に15年近く経過しています。しかし、状況はあまり変化していないようです。つい先月に
は電通の新入社員の女性の自殺が過労死として労災認定されたことが大きな話題となりま
した。彼女の残業時間は、労基署認定分だけでも月105時間にのぼったそうです。同社は2
5年前にも新入社員の男性の過労自殺があったにも関わらず、その教訓が活かせなかった
と言えますが、これは一企業の問題というよりも、日本社会全体の中にある労働について
の意識を見直していく必要性が問われているように思います。

参考資料:「平成28年版過労死等防止対策白書」
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/

********************************************************************************
【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
月曜から金曜日                    9:00〜21:00
土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)   10:00〜16:00
Tel:0570-064-556
※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して
おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。
パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察
から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら
も併せてご覧ください。
携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

********************************************************************************
【4】編集後記

皆様こんにちは。
今月はとうとう積もるほどの降雪がありましたね。例年よりも雪の足が速いようで、真冬
がもうすぐそこまで来ています。早くもインフルエンザが流行りはじめているようですの
で、皆様もどうぞお身体にお気をつけ下さい。

いつもご愛読ありがとうございます。
次号Vol.90は、2016年12月末に配信予定です。

                                                        *お問い合わせ先* 
                                                北海道立精神保健福祉センター
                                               札幌市白石区本通16丁目北6番34号
                                                              Tel 011-864-7121
                                                              Fax 011-864-9546
                                    URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                                    Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp