===============================================================================
[北海道]                                H29.4.30
・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。  Vol.094

              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
 ===============================================================================



********************************************************************************


※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています
。
--------------------------------------------------------------------------------
− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 平成29年3月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]
◇ 平成28年中の自殺者数(確定値)[警察庁発表]
【2】 自殺について知ろう
◇ 報告:平成28年度北海道自殺未遂者支援研修会
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP及び携帯HPをご覧ください
【4】 編集後記
--------------------------------------------------------------------------------

********************************************************************************
【1】北海道における自殺の現状

◇平成29年3月末の自殺者数(暫定値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
警察庁より平成29年3月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。
平成29年3月の北海道の自殺者数は86人でした。また、全国の自殺者数は1,862人、
そのうち男性は1,278人、女性は584人でした。
以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1.平成29年3月末と平成29年2月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       北海道    全国    全国(男性)   全国(女性)
H29年3月   86    1,862     1,278       584
H29年2月   76    1,608     1,115       493
前  月  比   +10    +254     +163        +91
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
平成29年3月の自殺者数は、前月比で北海道、全国、全国男性、全国女性のすべてが増加
しました。
都道府県別では、自殺者数が増加したのは34、減少したのは12、変化なしは1でした。

2. 平成29年3月末と平成28年3月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       北海道    全国    全国(男性)   全国(女性)
H29年3月   86    1,862     1,278       584
H28年3月   73    2,113     1,469       644
前  年  比   +13    -251     -191        -60
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

前年同月比では、全国・全国男性・全国女性は減少しましたが、北海道は増加でした。
また、都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは14、減少したのは32、増減なしは1
でした。

◇平成28年中の自殺者数(確定値)[警察庁]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
Andante Vol.91で平成28年1月〜12月の自殺者数(速報値)についてご報告させていただ
きましたが、3月23日に警察庁より「平成28年中における自殺の状況」として確定値が発
表されましたので、あらためてご報告させていただきます。
以下に全国と北海道の年間自殺者数、および北海道の月別自殺者数をまとめます。

1. 平成28年全国、および北海道の自殺者数の前年比 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       北海道     全国     全国(男性)   全国(女性)
平成28年  1,004     21,897     15,121      6,776
平成27年  1,147     24,025     16,681      7,344
前  年  比   -143     -2,128     -1,560      -568
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

平成28年の北海道の自殺者数は1,004人で前年に比べ143人の減少(-12.5%)でした。
全国の自殺者数は21,897人で前年比2,128人の減少(-8.9%)となりました。
そのうち男性の自殺者数は15,121人で前年比1,560人の減少(-9.4%)、女性の自殺者数は
6,776人で前年比568人の減少(-7.7%)でした。

2. 平成26年北海道における月別自殺者数の前年比 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        1月  2月  3月  4月   5月  6月
平成28年   90  74   73   99   83   88
平成27年   94  66   111  103  102   96
前 年 比   -4   +8   -38  -4   -19  -8
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        7月  8月  9月  10月  11月  12月
平成28年   96  74   91   86   81    69
平成27年  105  99   92   99   108   72
前 年 比   -9  -25   -1  -13   -27   -3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

平成28年に北海道で最も自殺者の少なかった月は3月の73人でした。逆に最も多かった月
は4月の99人でした。前年比において最も自殺者数の減少したのは3月の38人(-34.2%)、
逆に最も増加したのは2月の8人(+12.1%)でした。


********************************************************************************
【2】自殺について知ろう

◇報告:平成28年度北海道自殺未遂者支援研修会◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
平成29年3月12日に北海道自殺未遂者支援研修会が開催されました。今回は「救急医療に
おける自殺未遂者ケア」と題し、北海道において先進的に自殺未遂者ケアに取り組んでい
らっしゃる方々に講演と報告をしていただきました。以下に、各氏のご発表の内容につい
て簡潔にお伝えします。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
札幌医科大学医学部神経精神医学講座主任教授・河西千秋氏は「自殺未遂者ケアの最新知
識:救急科と精神科の連携による自殺未遂者のケース・マネジメント」と題して、自殺者
数が減少してきているとはいえ、今なお日本の自殺問題は深刻であること、そのため、自
殺の最大リスク要因である自殺未遂にアプローチする必要があること、自殺未遂者に対し
てACTION-Jを行うと自殺再企図を抑制し、特に40歳未満の若い人、女性、自殺未遂を繰り
返す人に対して効果が高いことをお話しくださいました。ACTION-Jについては、Andante 
Vol.82でもお伝えしていますが、未遂者の方が救急センターに来たときに、その方の精神
科的問題と生活上の諸問題の評価をしっかりと行い、お互いにそれらの問題について了解
しあえる話をした後に、精神科の治療と生活支援のソーシャルワークを展開するというケ
ースマネジメントモデルです。今後はACTION-Jのさらなる検証、診療報酬化されたので全
国的な普及のための事業化、そのための専門職の役割の明確化と鍛錬、そのために10ESSE
NTIALSという10項目の患者のアセスメントツールを用いた事例検討を重ねること、ネット
ワークの構築、困難事例への対処などが課題であるとのことです。最後に、メンタルヘル
スの重要性についても再確認していただきました。
札幌医科大学医学部神経精神医学講座助教・石井貴男氏は「リエゾン・コンサルテーショ
ンにおける自殺未遂者ケア」と題して、精神科リエゾンチームの役割、ACTION-Jの診療報
酬化、札幌医科大学精神科での自殺再企図予防の取り組みについてお話しくださいました
。特に、ACTION-Jを実際にどのようにやっているかという点について詳しくお話いただき
ました。
札幌医科大学医学部神経精神医学講座精神保健福祉士・須貝愛氏は「自殺未遂者への実際
の関わりと地域保健福祉との連携」と題して、実際に現場でソーシャルワーカーとしてケ
ースマネジメントに関わっているご経験をもとに、ケースマネジメントの視点、札幌医科
大学の救命救急センターにおける統計的データ、地域における自殺未遂者支援のあり方な
どについてお話くださいました。
北海道立精神保健福祉センター地域支援部長・岡崎大介氏からは「北海道自殺未遂者地域
支援体制整備事業モデル地域の取り組み」として、北海道における自殺未遂者支援体制の
整備事業の背景と現状、及び平成29年度の展望についてご説明いただきました。精神保健
福祉センターでは北海道内の保健所を対象として平成25年、26年に自殺未遂者支援体制整
備について調査を行ったところ、未遂者支援について具体的な取り組みを行っている保健
所は3,4カ所ということで、北海道の各地域で未遂者支援体制整備は遅れているという
のが現状です。平成25年からは網走保健所に対して当センターが未遂者支援体制整備の技
術支援をした結果、未遂者把握件数が大幅に増加し、平成28年8月末現在で個別支援を行
った事例では自殺再企図者はいないとのことです。しかし、支援を行う者が保健所保健師
に偏っており、基幹病院との連携も不十分との問題があります。北海道各地域において未
遂者支援体制が未整備でもあることから、平成27年度より、札幌医大の河西教授に北海道
の自殺対策アドバイザーに就任していただきました。平成29年度には、未遂者支援連携体
制案を作ってモデル2地域で試行的に取り組みをしていくことと、研修会や事例検討会を
行うことによって関係者が自殺未遂者へ対応できるような取り組みをやっていくとのこと
です。また、自殺未遂者支援体制整備の手引きを作成し、自殺未遂者支援部会を北海道と
して年に数回行うことになっているとのことです。
北海道渡島保健所木古内支所主査・堀本真理氏からは、「渡島保健所の取り組み〜モデル
事業を実施して〜」と題して南渡島圏域での取り組みについてご報告いただきました。こ
の地域では全国・全道と比べ自殺死亡率が高い割合を示していることから、さまざまな対
策を実施していましたが、具体的な連携体制やしくみ作りには至っていない状況だったの
で、モデル事業を実施することとし、自殺未遂者対応調査を行った結果、機関同士がつな
がって未遂者を連携しながら支援していくために必要な情報を共有できるしくみが必要だ
と考えられたので、平成29年度も連絡会議や学習会を継続しながら、仕組み作りへ向けて
活動していくとのことです。
北海道北見保健所健康推進課保健師・稲葉由恵氏からは、「北見保健所管内自殺未遂者支
援連携体制整備事業について」と題してご報告いただきました。自殺未遂については個別
対応に終始し、地域の実態も不明であったことからモデル事業を行うこととし、北見日赤
と保健所を中心に、地域の関係機関にも役割をとってもらいながら地域の自殺未遂者支援
について考えるという体制を作り、日赤病院の中でACTION-J介入プログラムのケースマネ
ージャーの資格を精神科の先生と精神科の専門看護師が取得して診療報酬算定の要件を整
える、リエゾンチームに自殺対策チームを設置するといった院内の取り組みを進めてもら
ったとのことです。今後の展開としては、未遂者支援の必要性の理解をベースとして、病
院の体制整備と、地域の連携体制の学習の機会や、事例検討を通したお互いの機関の役割
理解、支援を通した連携方法の模索などをしていくとのことです。
続く総合討論では、札幌医科大学救急医学講座(高度救命救急センター)助教の上村修二
氏に指定発言者としてご参加いただき、フロアからの質問に各氏からお答えいただきまし
た。また、上村氏より、救急の立場からの発言として、3次救急に搬送される方は半分く
らいはお亡くなりになったり、後遺症が残ってしまうので、3次救急に来るような再企図
の方を出さない体制がベストであること、現状は札幌市の場合は3つの2次救急の病院が自
殺企図を多く診ていますが、そのうち2病院は精神科がなく、1病院は精神科医は1名で外
来しかやっていないので、多くの自殺企図の方が精神科に関わらずに退院してしまう。2
次救急医療で自殺企図した方をどうやって良い支援に結び付けるかということは行政的な
仕事になってくるので、そこをしっかり対策して3次救急に来るような方をなるべく減ら
してほしいとのことでした。
最後に、当時の精神保健福祉センター長である田辺等氏より、北海道では平成17年から自
殺対策を続けてきたが、自殺は個人の意志の問題であるとか、自殺未遂者は本当は死ぬ気
はないのだという自殺に対する偏見もあり、なかなか対策が進まないところがあったが、
河西先生のACTION-Jの話には隔世の感がある、しかし北海道にはまだ基幹病院の機能が届
かない地域がたくさんあるので、保健所の積極的な動き方で市町村の保健師さんも巻き込
んで、またもう一歩進んでほしいとの挨拶で閉会しました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
自殺未遂者支援はまだ全国的にみても緒に就いたばかりの事業といえると思いますが、こ
うした研修会をはずみとして各地域で一層進展してほしいものだと思いました。


********************************************************************************
【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
月曜から金曜日                    9:00〜21:00
土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)   10:00〜16:00
Tel:0570-064-556
※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して
おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。
パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察
から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら
も併せてご覧ください。
携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

********************************************************************************
【4】編集後記

皆様こんにちは。
北海道にもようやく春が訪れ、そろそろ桜の季節です。
北海道立精神保健福祉センターの駐車場を兼ねた裏庭にも見とれるような桜が咲き誇りま
す。紙面ではお見せできないのが残念です。
今年度もAndanteをどうぞよろしくお願いいたします。

次号Vol.95は、2017年5月末に配信予定です。


                                                        *お問い合わせ先* 
                                                北海道立精神保健福祉センター
                                               札幌市白石区本通16丁目北6番34号
                                                              Tel 011-864-7121
                                                              Fax 011-864-9546
                                    URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                                    Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp