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[北海道]                                H29.9.30
・゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゚* Andante **・゜゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。  Vol.099

              〜北海道の自殺対策について〜

 Hokkaido                  発行:北海道地域自殺対策推進センター
 Government                 (北海道立精神保健福祉センター内)
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※『Andante:アンダンテ』とは
「ゆっくりと歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語です。ゆっくりと自分にとって
適度なスピードで歩いているとき、私達の視野はいつもよりぐっと広がり、忙しく過ごす
中では見過ごしがちなものに気が付くことがあります。北海道地域自殺対策推進センター
では、皆さんと共に歩いていけるような「Andante」を配信していきたいと考えています
。
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− 目 次 −
【1】 北海道における自殺の現状
◇ 平成29年8月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]
◇ 平成28年度「過労死等の労災補償状況」[厚生労働省]
【2】 自殺について知ろう
◇ 学生・生徒の自殺をめぐる状況
【3】 お知らせ
◇ こころの電話相談
◇ HP及び携帯HPをご覧ください
【4】 編集後記
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【1】北海道における自殺の現状

◇平成29年8月末の自殺者数(暫定値)[警察庁発表]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
警察庁より平成29年8月末の月別自殺者数の暫定値が発表されました。
平成29年8月の北海道の自殺者数は86人でした。また、全国の自殺者数は1,791人、そのう
ち男性は1,245人、女性は546人でした。
以下に、北海道および全国の前月比と前年同月比の自殺者数を示します。

1.平成29年8月末と平成29年7月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
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H29年8月 <北海道  86人、全国 1,791人、全国(男性) 1,245人、全国(女性) 546人>
H29年7月 <北海道  95人、全国 1,792人、全国(男性) 1,226人、全国(女性) 566人>
前 月 比 <北海道  -9人、全国    -1人、全国(男性)  +19人、全国(女性) -20人>
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平成29年8月の自殺者数は、前月比では全国男性において増加、北海道・全国・全国女性
において減少でした。都道府県別では、自殺者数が増加したのは19、減少したのは24、変
化なしは4でした。

2. 平成29年8月末と平成28年8月末の月別自殺者数の比較 (単位:人)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
H29年8月<北海道  86人、全国 1,791人、全国(男性) 1,245人、全国(女性) 546人>
H28年8月<北海道  74人、全国 1,701人、全国(男性) 1,175人、全国(女性) 526人>
前 年 比<北海道 +12人、全国  +90人、全国(男性) +70人、全国(女性) +20人>
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前年同月比では、北海道・全国・全国男性・全国女性の全てにおいて増加でした。また、
都道府県別でみると、自殺者数が増加したのは26、減少したのは18、増減なしは3でした
。

◇平成28年度「過労死等の労災補償状況」[厚生労働省]◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
厚生労働省は今年6月に平成28年度「過労死等の労災補償状況」を公表しました。これは
、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発
病した精神障害の状況について、平成14年から、労災請求件数や、「業務上疾病」と認定
し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回、取りまとめているものです。
自殺については、平成11年の通達により「業務上の精神障害によって、正常の認識、行為
選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害さ
れている状態で自殺が行われたと認められる場合」に業務上の死亡と認められるようにな
りました。

平成28年度は精神障害の労災認定件数が498件(前年度比26件増)と過去最多であった平
成26年度よりさらに1件多い結果となりました。この中には自殺と自殺未遂が84件含まれ
、こちらは前年度比9件減となりました。北海道では労災認定件数が37件で前年比18件増
、うち自殺と自殺未遂は9件で4件増でした。
自殺と自殺未遂の内訳は公表されていないので、ここでは自殺と未遂を合わせた84件につ
いて、詳しく見ていきたいと思います。精神障害の発症原因とされる具体的な出来事につ
いて目立つものをあげると、心理的な負荷が極度な「特別な出来事」が19件と最も多く、
次に「仕事内容・仕事量の(大きな)変化」が18件、「2週間以上にわたって連続勤務を
行った」が12件、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」が11件となっています。
年齢別の支給決定件数のうち自殺に関するものは、19歳以下が2件(構成比2.4%)、20〜2
9歳が22件(構成比26.2%)、30〜39歳が22件(構成比26.2%)、40〜49歳が22件(構成比2
6.2%)、50〜59歳が16件(構成比19.0%)、60歳以上が0件(構成比0.0%)でした。
都道府県別では、東京10件(構成比11.9%)、北海道9件(構成比10.7%)、茨城5件(構成
比6.0%)、大阪5件(構成比6.0%)、福岡5件(構成比6.0%)が上位となっています。
時間外労働時間別(1か月平均)は、20時間未満5件(構成比6.0%)、20時間以上〜40時間
未満8件(構成比9.5%)、40時間以上〜60時間未満10件(構成比11.9%)、60時間以上〜80
時間未満3件(構成比3.6%)、80時間以上〜100時間未満11件(構成比13.1%)、100時間以
上〜120時間未満12件(構成比14.3%)、120時間以上〜140時間未満8件(構成比9.5%)、1
40時間以上〜160未満5件(構成比6.0%)、160時間以上19件(構成比22.6%)、その他3件
(構成比3.6%)でした。
北海道の原因・動機別自殺者数をみると、全国平均に比べ、「経済・生活問題」・「勤務
問題」の占める割合が多い傾向にあります。自殺または未遂により労災補償を請求し、さ
らに認定されるのはごく一部分です。実際にはその何倍もの方が、過重な仕事によって自
殺または未遂に追い込まれています。職場における自殺予防、メンタルヘルス対策への一
層の取り組みが求められます。

参考資料
厚生労働省 平成28年度「過労死等の労災補償状況」


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【2】自殺について知ろう

◇学生・生徒の自殺をめぐる状況◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『平成27年版自殺対策白書』によると、「18歳以下の自殺者において、過去約40年間の日
別自殺者数をみると、夏休み明けの9月1日に最も自殺者数が多くなっているほか、春休み
やゴールデンウィーク等の連休等、学校の長期休業明け直後に自殺者が増える傾向がある
ことがわかる。」とあります。実際にグラフをみると、一番自殺者数が出ているのは9月1
日131人、続いて4月11日99人でした。また、今年の夏もいくつかの学生による自殺報道が
ありました。
学生の自殺については警察庁統計のほか文部科学省も統計をとっています。文部科学省の
「平成27年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(平成29年)に
よると、平成27年の学生による自殺は、総数215人(小学生4人、中学生56人、高校生155
人)、前年比17人減でした。自殺した児童生徒の学年別内訳は、小学校1〜3年0人、4年2
人、5年0人、6年2人、中学校1年10人、2年22人、3年24人、高等学校1年49人、2年、51人
、3年51人、4年4人でした。自殺した児童生徒が置かれていた状況(複数回答可)では、
「進路問題」が最も多く26人(構成比12.1%)、続いて「家庭不和」23人(構成比10.7%)
、「精神障害」20人(構成比9.3%)でした。「いじめの問題」は9人(構成比4.2%)でし
た。

これまでの取り組み
児童生徒の自殺問題については、児童生徒の自殺者数が全体に占める割合は大きくないも
のの、亡くなった児童生徒が置かれていた状況にいじめがある自殺や連鎖的な傾向が見ら
れるなどの問題があり、教育上重要な課題とされています。また、効果的な自殺予防を実
施するためには、残された人々のケアを実施することを最優先課題としながら、自殺の正
確な実態を把握することが不可欠であると考えられています。
児童生徒の自殺について実態把握を行うため、文部科学省では、毎年「児童生徒の問題行
動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を実施し、児童生徒の自殺者数、自殺した児童生
徒が置かれていた状況等について学校・教育委員会から報告を受け、取りまとめています
。
また、心理の専門家など外部の専門家を加えた組織による調査等の事後対応の在り方につ
いて、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の指針」策定(平成23年)後の各自治体
における運用状況や、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)における重大事態へ
の対処の規定等を踏まえ、26年7月に同指針を改定し、公表しました。
さらに、同指針の改定を踏まえ、各教育委員会等及び学校に対し、児童生徒の自殺が起き
たときの背景調査を行う際の基本的な考え方や留意事項を示すとともに、自殺の背景とな
った事実関係に関する一定事項の報告を要請しています。
文部科学省では、平成20年度から「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」を
開催し、児童生徒を直接対象とした自殺予防教育の在り方や、児童生徒の自殺が起きたと
きの背景調査の在り方について調査研究を行っており、26年7月には、これらの検討の結
果として、学校における自殺予防教育導入の手引きである「子供に伝えたい自殺予防」、
「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」
を作成、公表しました。28年度は、これらの審議のまとめについて、各教育委員会等の生
徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発
協議会」を開催し、周知を図りました。

これからの取り組み
これまでの児童生徒への取り組みを見ると、実態把握や生命を尊重することの大切さとい
った道徳教育が中心となっていました。しかし、平成28年の自殺対策基本法の改正や我が
国の自殺の実態を踏まえた抜本的な見直しに伴い、新たに作成された「自殺総合対策大綱
」によると、「いじめを苦にした子どもの自殺の予防」、「学生生徒への支援充実」、「
SOSの出し方に関する教育の推進」、「子どもへの支援の充実」、「若者への支援の充実
」、「若者の特性に応じた支援の充実」、「知人への支援」といった項目が挙げられてい
ます。また、厚生労働省が平成28年10月に実施した「自殺対策に関する意識調査」におい
ては、「どのようなことを学べば、自殺予防に資すると思うか」と尋ねたところ、「周囲
の人に助けを求めることが恥ずかしくないこと」(71.2%)、「ストレスへの対処方法を
知ること」(51.4%)、「心の問題を抱えた際の心理、身体状況について正しく知ること
」(50.3%)となっていました。今後は命の大切さを知るという道徳教育から一歩進み、
実際に危機的な立場に立たされた時どのように対処するか、またその対処をするための心
の敷居を下げる教育へと進んでいくものと思われます。

参考文献
厚生労働省、2015、『平成27年版自殺対策白書』
厚生労働省、2017、『平成29年版自殺対策白書』
厚生労働省、2017、「自殺総合対策大綱〜誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現
を目指して」
文部科学省、2017、「平成27年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調
査」


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【3】お知らせ

◇ 精神保健福祉センターでは、こころの電話相談を次の時間帯で行っています。
月曜から金曜日                    9:00〜21:00
土曜日曜祝日(12月29日〜1月3日を除く)   10:00〜16:00
Tel:0570-064-556
※ご相談の電話が集中しますと、つながりづらい状態になりますがご了承ください。

◇ HP・携帯版HPをご覧ください
北海道地域自殺対策推進センターのHPを開設しています。最新の北海道の状況を掲載して
おり、より情報を見やすく、分かりやすくお伝えできるよう心がけています。
パソコンHP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/jisatutaisaku.htm

また、携帯電話で見ることができる携帯版HPも開設しています。警察庁および北海道警察
から公表された統計資料をもとに、北海道における自殺の状況を掲載しています。こちら
も併せてご覧ください。
携帯HP  URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/i/joukyou.htm

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【4】編集後記

北海道の短い夏も終わり、木々の葉もすっかり色づきました。これから日が短くなり長い
冬に近づいていくと考えると少し暗い気持ちになる気もしますが、たまには月見に団子で
も食べて秋を満喫するのもいいかもしれないと、いかにも太りそうな計画も立てておりま
す。

いつもご愛読ありがとうございます。
次号Vol.100は、2017年10月末に配信予定です。


                                                        *お問い合わせ先* 
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                                                              Fax 011-864-9546
                                    URL  http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/sfc/
                                    Mail   hofuku.seishin1@pref.hokkaido.lg.jp